句の意味・現代語訳
原文 ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは |
現代語訳 不思議なことの多い神代でも聞いたことがない。竜田川が唐紅色に水をくくり染めにしているとは。 |
句の解説
竜田川の紅葉の華麗な美しさ。「古今集」の詞書には「二条の后の東宮の御息所と申しける時に、御屏風に竜田川にもみじ流れたる絵を描けりけるを題にて詠める」とあります
屏風歌である。屏風歌とは、大和絵の屏風に和歌をつけたものです。9世紀末から始まり、10世紀には盛んに読まれるようになりました。
この歌では竜田川の川面を流れる紅葉を唐紅色のくくり染めに見立てています。そのようにくくり染めにしたのは竜田川であるとして、ここには擬人法が用いられています。いかにも奇抜な発想によっているが、それだけに読者は実際はどうなのかと思わずにはいられなくなります。また、「ちはやぶる神代も聞かず」という言い方も大げさです。
我々は竜田山を背景に竜田川の川面も流れる紅葉の鮮やかな紅色を、どれほど華麗かと想像せずにはいられません。
句の語句語法
ちはやぶる | 「神」にかかる枕詞。 |
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神代も聞かず | 「神代」は、神々の時代。不思議な事が数多く起こった神々の時代にも聞いたことが無いという意。 |
竜田川 | 奈良県生駒郡斑鳩町竜田にある竜田山のほとりを流れる川。紅葉で名高い。 |
からくれない | 鮮やかな紅色。唐国から渡来したこところから、「唐」が接頭語の様な形で美称として用いられた。 |
水くくる | 主語は竜田川で、擬人法。「くくる」は、くくり染め(絞り染め)にすること。紅葉が流れている様子を、竜田川が唐紅色にくくり染めにした、と見た立てる。「とは」は、意味上「聞かず」に続く。倒置法である。 |
句の季節・部立
和歌を季節等のテーマ別に分類したもの。
部立 |
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秋 |
句の作者
在原業平朝臣(825~880)
平成天皇の皇子阿保親王の子で在原行平の異母弟。六歌仙の一人。在五中将在中将とも呼ばれる伊勢物語の主人公「昔男」のモデルとされます。
句の詠み上げ
句の決まり字
決まり字 |
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ちは |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
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Even when the gods Held sway in the ancient days, I have never heard That water gleamed with autumn red As it does in Tatta’s stream. |