百人一首55番 「滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ」(藤原公任)の意味と現代語訳
百人一首の55番、大納言公任の歌「滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ |
日本語訳 滝から流れる水音が聞こえなくなってから、もう長い年月が過ぎ去ってしまったが、その名声だけは世間に流れ伝わって、今もなおよく人々に知れ渡っていることだよ。
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句の作者
大納言公任(966〜1041)
大納言公任(だいなごんきんとう)は、藤原公任(ふじわらのきんとう)のこと。平安時代中期の公卿。藤原頼忠の長男として生まれ、藤原定頼の父でもありました。歌に優れ「和漢朗詠集」「拾遺抄」「三十六人撰」それぞれの撰者の一人で、家集である「公任集」も有名な作品の一つです。官位は正二位・権大納言で、小倉百人一首では大納言公任と称されます。
句の語句語法
滝の音は | 「滝の流れ落ちる水音は」の意味。「滝」は、「拾遺集」の詞書から、大覚寺にあった人工の滝を指す。大覚寺は、もともと嵯峨天皇(796~842)の離宮として造営された寺院で、後に真言宗の管理下となった。 |
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絶えて久しくなりぬれど | 「ぬれ」は完了の助動詞「ぬ」の已然形で、「ど」は、逆接の確定条件を表す接続助詞。「~けれども」の意味。よって「聞こえなくなって長くたつけれど」を意味する。この歌が詠まれたのは、離宮(大覚寺)造営から約200年後のことであり、滝の水は既に枯渇していたものと推測される。現在大覚寺の滝跡は、この歌にちなんで「名古曽(なこそ)の滝跡」と呼ばれおり、滝は復元されている。 |
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名こそ | 「名」は名声や評判。「こそ」は強調の係助詞。 |
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流れて | (評判が)広まること。「流れ」は滝の縁語。 |
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なほ聞こえけれ | 「なほ」は「それでもやはり」の意味の副詞。詠嘆の助動詞「けれ」は、前の「こそ」を結ぶ言葉で「けり」の已然形。 |
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句の決まり字
決まり字「たき」 |
たきのおとは たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なほきこえけれ |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | たきのおとは たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なほきこえけれ |
覚え方 | 滝の名こそ 滝の前で名前を叫ぶ男の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
Though the waterfall
In its flow ceased long ago,
And its sound is stilled;
Yet, in name it ever flows,
And in fame may yet be heard. |