句の意味・現代語訳

原文
八重むぐら しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり
日本語訳
幾重にもつる草(雑草)の生い茂っている荒れ寂れた宿は寂しく、人は誰も訪ねてこないが、秋だけは訪れるようだ。

句の作者

恵慶法師(生没年不詳)

恵慶法師(えぎょう)は、平安時代中期の歌人で、僧でもあり歌人でもありました。中古三十六歌仙の一人で、公家の歌人とも交流が深く、歌合などでも活躍しました。

句の語句語法

八重葎(やえむぐら)「葎(むぐら)」は、つる状の雑草の総称。「八重」は「何重にも」の意味。つる草が重なってはびこっている状態で、、荒れ果てた家などの姿を表現するときに象徴的に使われる言葉。
しげれる宿草ぼうぼうの荒れ果てた家を表す。「宿」は和歌独特の言い回しで、家のこと。「しげれ」は、ラ行四段の動詞「しげる」の命令形。または、已然形とする説もある。「の」は、同格の格助詞。「に」は、場所を示す格助詞。あるいは、順接の確定条件を表す接続助詞や、逆接の確定条件を表す接続助詞とする説もある。
人こそ見えね「人」は、訊ねてくる客。「ね」は、打消の助動詞「ず」の已然形で「こそ」の結び。「こそ」は、強意の係助詞。「こそ~ね、~」という形で続く場合、逆接の関係を表し、「~ないが、~」の意味となる。よって「人は見あたらないけれども」を意味する。
秋は来にけり「けり」は、今初めて気づいたことを表す詠嘆の助動詞。「人こそ~」と並列。「は」は、区別を表す係助詞。

句の季節・部立

季節・部立

句の決まり字

決まり字「やへ」
やへむぐら しげれるやどの さびしきに ひとこそみえね あきはきにけり

句の語呂合わせ(覚え方)

語呂合わせ
やへむぐら しげれるやどの さびしきに
ひとこそみえね あきはきにけり
覚え方八重で人こそ見えねぇ
人混みで見えない友人を探す女の子

句の出典

出典
拾遺集

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
To the humble cot, Overgrown with thick-leaved vines In its loneliness, Comes the dreary autumn time;-- And not even man is there.