百人一首62番 「夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ」(清少納言)の意味と現代語訳
百人一首の62番、清少納言の歌「夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ |
日本語訳 夜がまだ明けないうちに、鶏の鳴き声を真似して夜が明けたと人をだまそうとしても、そんな嘘は通用しませんよ。(中国の)函谷関ならいざ知らず、あなたとわたしの間にあるこの逢坂(おおさか)の関は、決して許す(開く)ことはありません。
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句の作者
清少納言(966〜1025)
清少納言(せいしょうなごん)は、平安文学の代表的作品である随筆「枕草子」の作者として知られる、平安時代中期の作家であり、歌人としても活躍しました。清原元輔として生まれ、中宮定子に仕えた人物でした。
句の語句語法
夜をこめて | 動詞の連用形「こめ」は、もともと「しまい込む・包みこむ」の意味。よって「夜がまだ明けないうちに」を意味する。 |
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鳥の空音(そらね)は | 「鳥」は「にわとり」で、「空音」は「鳴き真似」のこと。 |
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謀(はか)るとも | 「はかる」は「だます」の意味。「とも」は逆接の接続助詞で「~しても」の意味。「鶏の鳴き真似の謀ごと」とは、斉の孟嘗君が秦から逃げる際、一番鶏が鳴いた後にしか開かない函谷関にさしかかったのが深夜であったため、食客にニワトリの鳴きまねをさせて通過したという史記(中国)のエピソードを指す。 |
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よに逢坂(あふさか)の関は許(ゆる)さじ | 「よに」は「決して」の意味を表す呼応の副詞で、下に否定の語を伴う。「逢坂の関」は京都府と滋賀県の境にあった関所。「逢坂の関」は男女が夜に逢って過ごす「逢ふ」と意味を掛けた掛詞。「逢坂の関を通るのは許さない」という表の意味と、「あなた(藤原行成)が逢いに来るのは許さない」という意味を掛けている。 |
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句の決まり字
決まり字「よを」 |
よをこめて とりのそらねは はかるとも よにあふさかの せきはゆるさじ |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | よをこめて とりのそらねは はかるとも よにあふさかの せきはゆるさじ |
覚え方 | よをよに 夜の街を歩く男の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
Though in middle night,
By the feigned crow of the cock,
Some may be deceived;--
Yet, at Ausaka's gate
This can never be achieved. |