句の意味・現代語訳

原文
朝ぼらけ 宇治の川霧 絶え絶えに あらはれわたる 瀬々の網代木
日本語訳
徐々に夜が明けるころ、宇治川の川面に立ちこめていた朝霧がところどころ薄らいでいって、その薄らいだ霧の合間から現れてきたのが、あちらこちらの瀬に打ち込まれた網代木であるよ。

句の作者

権中納言定頼(995〜1045)

権中納言定頼(ごんのちゅうなごんさだより)は、藤原定頼(ふじわらのさだより)のこと。平安時代中期の公卿であり、歌人でした。藤原公任の子として生まれ、中古三十六歌仙の一人としても知られる人物です。官位は正二位・権中納言で、小倉百人一首では権中納言定頼と称されました。社交的な人物であったと伝えられています。

句の語句語法

朝ぼらけ「明け方・辺りがほのぼのと明るくなってきた頃」の意味。秋または冬に用いられる語。暁(あかつき)→曙(あけぼの)・東雲(しののめ)→朝ぼらけの順で明るくなる。
宇治の川霧宇治川は京都府宇治市を流れる川。琵琶湖の南から流れはじめる瀬田川の下流、京都府に入る手前から桂川・木津川と合流して淀川となる大山崎の辺りまでを指す。
たえだえに「とぎれとぎれに」の意味。この場合は、川霧がきれぎれに薄れていき、晴れてくる様子を表す主述関係であるとともに、「あらはれわたる」に続いて網代木があちこちに見えるようになってきた様子を表す連用修飾関係。
あらはれわたる「あちこちに表れてくる」の意味。つまり、見える状況が時間的・空間的に広がる様子を表す。
瀬々の川の浅い場所。
網代木(あじろぎ)「網代(あじろ)」は、冬に氷魚(鮎の稚魚)を取る仕掛けで、網の代わりに木や竹を編んで作った漁具。川の浅瀬に杭を打ち、「簀(す)」という竹や木で編んだざるを仕掛ける道具で、平安時代の宇治川の風物詩。「網代木(あじろぎ)」は網代を立てる杭のこと。

句の季節・部立

季節・部立

句の決まり字

決まり字「あさぼらけ う」
あさぼらけ うぢのかはぎり たえだえに あらはれわたる せぜのあじろぎ

句の語呂合わせ(覚え方)

語呂合わせ
あさぼらけ うぢのかはぎり たえだえに
あらはれわたる せぜのあじろぎ
覚え方朝ぼらけ宇治、現れる
朝ぼらけの宇治川で魚が跳ねる様子

句の出典

出典
千載集

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
Lo! at early dawn, When the mists o'er Uji's stream Slowly lift and clear, And the net-stakes on the shoals, Near and far away, appear!