句の意味・現代語訳
原文 花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに |
現代語訳 桜の花は虚しく色あせてしまった。春の長雨が降っていた間に。ー私の容姿もすっかり衰えてしまった。生きていることのもの思いをしていた間に。 |
句の解説
色褪せる桜によせる人生の衰えの哀愁。「経(ふ)る」と「降る」、「長雨」と「眺め」の2組の掛詞から、ふるながめとへる眺めという自然と人事とを重ねた二重の文脈を作っています。散る前に眺めのために既に色あせてしまった桜と、ぼんやり物思いにふけっている間に盛りを過ぎてしまった我が身とが重ねられています。
古来、桜の色はその儚い美しさが深い愛着の情をもって賞美されました。ここでは、ただでさえ開花期間の短い桜の花が、長雨のために散る前に色あせてしまったというのです。そのような桜の花に、自分自身を重ねていきます。つまり、女盛りの美しさを人前で十分に発揮することもなく、むなしく老いさらばえていく自分自身の人生が、深い相席の気持ちを持って見つめられています。
句の語句語法
花の色 | 「花」は桜。女の容姿も暗示している。 |
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うつりにけりな | 「花の色」とあるので、「うつる」は色あせて衰える。ケリなの「な」は感動を表す終助詞。長めのため散る前に、花の色があせてしまい盛りの美しさを見せないまま終わってしまったというのである。 |
いたづらに | 無駄に・むなしくの意。「ふる」にかかる。 |
ふる | 「「経(ふ)る」と「降る」の掛詞。夫婦は年を経る暮らしていく、の意。 |
ながめせしまに | 「眺め(もの思い)」と「長雨」の掛詞。「・・・経る・・・」の人事と「・・・降る長雨・・・」の自然との二重の文脈を作る。意味上、上に続く。倒置法。 |
句の季節
季節 |
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春 |
句の作者
小野小町(9世紀後半)
9世紀後半の人。六歌仙唯一の女流歌人。絶世の美人と言われ、各地に小町伝説を残しており、謡曲「卒塔婆小町」の題材にもなりました。しかしその経歴は未詳です。
句の出典
古今集とされている。
出典 |
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古今集 |
句の詠み上げ
句の決まり字
決まり字 |
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はなの |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
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Color of the flower Has already faded away, While in idle thoughts My life passes vainly by, As I watch the long rains fall. |