句の意味・現代語訳
原文 田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ |
現代語訳 田子の浦に出てみると、真っ白な富士の高嶺にしきりに雪が降っていることだよ。 |
句の作者
山部赤人(8世紀半ばごろ:詳細不明)
8世紀半ばの頃の人物。三十六歌仙の一人。百人一首3番歌を詠んだ柿本人麻呂よりやや後の時代に活躍した宮廷歌人。叙景歌に優れ、人麻呂と並び称された。
句の解説
風景の中心を占めるのは富士の山頂です。本歌は眼前に田子の浦、遠くに真っ白な富士の高嶺を配置した構図になっています。
近影が具体的には描写されないのに対して、円形の富士の姿が最も鮮明に映像化されています。山頂の白さがくっきりと描かれ、それを中心に広大な空間が広がっているコントラストが美しい歌です。一枚の美しい風景写真が言葉で描かれたような歌で。空間の安定した構図が描写された叙景歌といわれる歌の典型です。
句の語句語法
田子の浦に | 田子の浦は駿河国(静岡県)の海岸。「に」は作者の立っている場所を示す。 |
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うち出でてみれば | 家「うち」は動詞につく接頭語で、語調を整える。 接続助詞「ば」は已然形から続くと確定条件を表す。ここでは「~と」訳す。海辺に出たことによって急に視界が広がったのである。 |
白妙の | 枕詞。純白のイメージ。 |
雪は降りつつ | 「つつ」は反復継続の意の接続助詞。本歌では時間の経過が込められ、雪があとからあとから降ってくることを表す。 富士の高嶺に雪が降っている様子が田子の浦から見えるわけもないが、枕詞「白妙」のと合わせて、幻想的な雰囲気が加味されている |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
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When I take the path To Tago`s coast, I see Perfect whiteness laid On Mount Fuji`s lofty peak By the drift of falling snow. |