句の意味・現代語訳

原文
心当てに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花
日本語訳
もし手折(たお)るならば、当てずっぽうに折ってみようか。一度初霜がおりて、区別しにくくなっている白菊の花を。

句の作者

凡河内躬恒(898〜922)

凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)は、三十六歌仙の一人。平安前期の歌人で、簡易には恵まれなかったものの、紀貫之と並ぶ歌壇の中核的な人物とされました。「古今集」撰者の一人でもありました。

句の語句語法

心あてに「に」は、手段・方法の格助詞。体言+格助詞「に」で連用修飾格を表す。よって「当てずっぽうで(~する)」を意味する。六音で字余り。
折らばや折らむ「折らば」は四段活用動詞「折る」の未然形に接続助詞「ば」がついたもので、仮定条件を表す。「や」は疑問の係助詞。「む」は意志の助動詞の連体形で、上の「や」と係り結びの関係。よって「もし折るならば、折ってみようか」を意味する。二句切れ。
初霜のその年の最初におりる霜。あるいは、晩秋に降る霜。「の」は、主格の格助詞。
置きまどはせる「置く」は、「(霜が)降りる」の意味。「まどはせ」は、動詞「まどはす」の命令形、または已然形とする説もあり、「まぎわらしくする」の意味。「る」は、存続の助動詞「り」の連体形で、動詞の活用語尾ではない。よって「白菊の上に白い初霜が降りて、初霜なのか白菊なのか、見分けにくくなっている」を意味する。
白菊の花上の句の「折らばや」と同様の倒置法を使用している。

句の季節・部立

季節・部立

句の出典

出典
古今集

句の決まり字

決まり字
こころあ

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
If it were my wish White chrysanthemum to cull;-- Puzzled by the frost Of the early autumn time, I by chance might pluck the flower.