句の意味・現代語訳

原文
有明の つれなく見えし 別れより あかつきばかり うきものはなし
日本語訳
有明の月は冷ややかで、つれなく見えた。冷たく薄情に思えた別れの時から、今でも夜明け前の暁ほど憂鬱で辛く感じるものはない。

句の作者

壬生忠岑(898〜920)

壬生忠岑(みぶのただみね)は、『古今集』撰者の一人で、三十六歌仙の一人。平安時代前期に歌人として活躍しました。壬生忠見の父でもあります。

句の語句語法

有明(ありあけ)の「有明」は、陰暦で16日以後月末にかけて、月の欠けと同時に月の入りが遅くなり、明け方まで空に残っている月のこと。あるいは、空に月が残ったまま夜が明けることを表す。「の」は、主格の格助詞、または連体修飾格という説もある。
つれなく見えし「つれなく」は形容詞「つれなし」の連用形で、「冷淡だ・無情だ・平気だ」など現代と同様の意味で、「つれない」の意味を表す。「し」は、体験回想を表す過去の助動詞「き」の連体形で、過去の恋人(女性)との別れを回想しており、月の冷たさと別れた女性の冷たさを重ねている。なお、何がつれないのかは、「女性」「月」「両方」の三説ある。
別れより「より」は時間の起点を表す格助詞で、「~の時から」という意味になり、現在までの時間の経過を表す。この場合の「別れ」には二説ある。1つ目は、後朝(きぬぎぬ)の別れ、すなわち共寝をして帰る朝の別れ。2つ目は、女性にふられて何もできなかった朝の別れ。
暁(あかつき)ばかり「暁(あかつき)」は 「明時(あかとき)」が転じた言葉で、夜明け前の暗い状況を表す。「ばかり」は程度の副助詞で、後の「なし」と組み合わせて、「~ほど、~なものはない」を意味する。暁、曙(あけぼの)・東雲(しののめ)、朝ぼらけの順で明るくなる。
憂(う)きものはなし「憂き」は形容詞「憂し」の連体形で、「つらい・憂鬱な」の意味。よって「夜明け前ほど、憂鬱な時間はない」を意味する。

句の季節・部立

季節・部立

句の決まり字

決まり字「ありあ」
ありあけの つれなくみえし わかれより あかつきばかり うきものはなし

句の語呂合わせ(覚え方)

語呂合わせ
ありあけの つれなくみえし わかれより
あかつきばかり うきものはなし
覚え方ありゃ、赤
何かに驚いて赤面する男の子

句の出典

出典
古今集

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
Like the morning moon, Cold, unpitying was my love. Since that parting hour, Nothing I dislike so much As the breaking light of day.