句の意味・現代語訳

原文
朝ぼらけ 有明の月と見るまでに 吉野の里に 降れる白雪
日本語訳
夜がほのかに明るくなってきた明け方頃、あたかも有明の月かと思うほどに、吉野の里には白雪が降り積もっているではないか。

句の作者

坂上是則(1185〜没年不詳)

坂上是則(さかのうえのこれのり)は、征夷大将軍を務めた、坂上田村麻呂の子孫と伝えられる、平安前期の歌人です。三十六歌仙の一人に名を連ねていました。

句の語句語法

朝ぼらけ夜が明けて、ほのかに周囲が明るくなってくる頃。暁、曙(あけぼの)・東雲(しののめ)、朝ぼらけの順で明るくなる。
有明の月「有明」は、陰暦で16日以後月末にかけて、月の欠けと同時に月の入りが遅くなり、明け方まで空に残っている月のこと。あるいは、空に月が残ったまま夜が明けることを表す。
見るまでに視覚の「見る」ではなく、思考の「思う・判断する」の意味。「まで」は極端な程度を表す副助詞で、「~ほど・くらい」を表す。よって「思うばかりに」を意味する。実際に「有明の月」を見ているわけではなく、雪の白さを強調するために「有明の月かと思うほど」と表現している。
吉野の里吉野は、奈良県吉野郡のあたり一帯を指す。山間部で雪が多い場所。春は桜、冬は雪の名所として、平安時代に名高い山里だった。
ふれる白雪「ふれ」は、動詞「降(ふ)る」の命令形。「る」は、存続・継続を示す助動詞「り」の連体形で、「ふれる」は「降っている」の意味。「体言止め」を使用している。よって「雪が降り続いている」を意味する。「ふれる(降れる・触れる・振れる)」は「降(ふ)れ+る」の二語であり、一語の動詞ではない。

句の季節・部立

季節・部立

句の決まり字

決まり字「あさぼらけ あ」
あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき

句の語呂合わせ(覚え方)

語呂合わせ
あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに
よしののさとに ふれるしらゆき
覚え方朝ぼらけ有明の吉野
朝焼けの中、有明の吉野を歩く女の子

句の出典

出典
古今集

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
At the break of day, Just as though the morning moon Lightened the dim scene, Yoshino's fair hamlet lay In a haze of falling snow.