句の意味・現代語訳

原文
久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ
日本語訳
こんなに陽の光がのどかに降り注いでいる春の日なのに、どうして桜の花は落ち着いた心もなく散ってしまうのだろう。

句の作者

紀友則(850〜904)

紀友則(きのとものり)は、平安時代前期の官人であり、歌人として活躍しました。紀貫之の従兄弟であり、三十六歌仙の一人でした。「古今集」撰者の一人であったものの、「古今集」が完成する前に亡くなっています。

句の語句語法

ひさかたの「天・日・月・空・雲・雨」など天空や気象に関するものに掛かる。ここでは「光」にかかる枕詞となっている。
光のどけき「のどけき」は、形容詞「のどけし」の連体形で、「のどかだ・穏やかだ」の意味。よって「光のどけき」で、「春の日」を修飾する連体修飾格となり、「日の光が穏やか」を意味する。
静心なく「静心(しづごころ)」は「落ち着いた心」の意味。「静心なく」で、「散るらむ」を修飾する連用修飾格となり、「落ち着いた心がなく」を意味する。散る桜の花を擬人化している。また、「のどけき(のどかだ・穏やかだ)」と「静心なく(落ち着いた心がなく)」の対照的な表現となっている。
花の散るらむ花は桜を示す。「の」は、主格の格助詞。「らむ」は目に見える場所での原因を推量する助動詞で、「どうして~だろう」の意味。よって「どうして、心静めずに桜は散っているのだろうか」を意味する。 もしくは、「花の散る」原因を「静心なく」とし、「落ち着いた心がないので、花は散るのだろう」とする説もある。

句の季節・部立

季節・部立

句の出典

出典
古今集

句の決まり字

決まり字
ひさ

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
In the cheerful light Of the ever-shining Sun, In the days of spring; Why, with ceaseless, restless haste Falls the cherry's new-blown bloom?