百人一首40番 「しのぶれど 色に出でにけり 我が恋は 物や思ふと 人の問ふまで」(平兼盛)の意味と現代語訳
百人一首の40番、平兼盛の歌「しのぶれど 色に出でにけり 我が恋は 物や思ふと 人の問ふまで」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 しのぶれど 色に出でにけり 我が恋は 物や思ふと 人の問ふまで |
日本語訳 他人には気付かれないように恋しい思いを耐え忍んできたけれど、顔色に出てしまっているのだ、私の恋は。「恋の物思いでもしているのですか」と他人に訪ねるほどまでに。
|
句の作者
平兼盛(生年不詳〜991)
平兼盛(たいらのかねもり)は、平安中期の貴族で、歌人として三十六歌仙の一人として数えられる人物です。光孝天皇の子孫(やしゃご)として生まれますが、その家柄と比べて官位が低い人物で従五位上・駿河守に留まりました。
句の語句語法
しのぶれど | 「忍(しの)ぶれ」は、バ行上二段活用動詞「忍ぶ」の已然形で「耐える・我慢する」の意味。「人に知られないよう心に秘めてきたけど」を意味する。「ど」は、逆接の確定条件を表す接続助詞。 |
---|
色に出でにけり | 「色」は表情のことで、「出で」は、ダ行下二段の動詞「出づ」の連用形。「色に出づ」で、恋愛感情が顔に出ることを示す。「けり」は今初めて気づいたことを表す詠嘆の助動詞で、この場合、他人から「恋煩いをしているのか」と質問されたことで、恋心が顔に出てしまっていることに初めて気づいたことを示す。 |
---|
ものや思ふ | 「思ふ」は、ハ行四段の動詞「思ふ」の連体形で、「や」の結び。「もの思ふ」は恋について想いわずらうことを意味しており、また「や」は疑問の係助詞。「ものや思ふ」で、「物思いしているのですか」という他人からの質問を表す。「と」は、引用を表す格助詞。 |
---|
人の問うまで | 「人」は、自分と恋愛の対象女性以外の第三者を指す。ただし、この歌は、技巧を競う歌合で詠まれたものであり、恋愛対象も第三者も架空の人物である。「の」は、主格の格助詞。「まで」は、程度を表す副助詞で、「~ほど・くらい」の意味。よって「人の問うまで」は「他人が尋ねるほどに」を意味する。「ものや思ふ」に繋がる上下の句が逆さまの「倒置法」を使っている。 |
---|
句の決まり字
決まり字「しの」 |
しのぶれど いろにいでにけり わがこひは ものやおもふと ひとのとふまで |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | しのぶれど いろにいでにけり わがこひは ものやおもふと ひとのとふまで |
覚え方 | しのもの 隠れて何かを持つ男の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
Though I would conceal,
In my face it yet appears,--
My fond, secret love:--
So much that he asks of me,
"Does not something trouble you?" |