句の意味・現代語訳

原文
ちぎりきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波こさじとは
日本語訳
固く約束したのにね。お互いに涙で濡れた袖をしぼりながら、波が末の松山を越すことがないように、二人の愛が永遠であることを。

句の作者

清原元輔(908〜990)

清原元輔(きよはらのもとすけ)は、平安時代中期の貴族であり、歌人として活躍しました。三十六歌仙の一人に数えられます。「後撰集」の編纂に携わった人物でもあり、清少納言の父親でもあります。

句の語句語法

契りきな「契り」は四段活用動詞「契る」の連用形で、主に「(恋の)約束をする」の意味。「き」は体験的回想を表す過去の助動詞「き」の終止形、「な」は感動を表す終助詞で、恋人関係にある者同士が、互いの愛が永遠であると約束したことを感動的に回想している。ただし、「後拾遺集」の詞書によると、この歌は、女性に振られた男性に代わって元輔が詠んだ歌であり、元輔本人の体験ではない。初句切れ。
かたみに互いにの意味を表す副詞。
袖をしぼりつつ「袖をしぼる」というのは「泣き濡れる」という意味で、「涙を拭いた袖がしぼらねばならないほどぐっしょり濡れた」の意味。平安時代の歌によく使われる表現。「つつ」は反復・継続を表す接続助詞。
末の松山現在の宮城県多賀城市周辺を指す。どれほど大きな波も末の松山を越すことはないとされた。歌枕。
波越さじとは「波」は、気持ちの変化のたとえ。「波越す」で気持ちが変わること、浮気。「じ」は、打消推量の助動詞「じ」の終止形で打消の意志を表す。「かたみ~とは」までが「契りきな」に続く倒置法になっている。末の松山はどんな大きな波でも越せないことから、永遠を表す表現、「2人の間に心変わりがなく永遠に愛し続ける」ことを表す。「と」は、引用の格助詞で、「末の松山波越さじ」を受ける。「~とは」は、意味上、初句に続く。

句の季節・部立

季節・部立

句の出典

出典
後拾遺集

句の決まり字

決まり字
ちぎりき

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
Have we not been pledged By the wringing of our sleeves,-- Each for each in turn,-- That o'er Sue's Mount of Pines Ocean waves shall never pass?