句の意味・現代語訳

原文
なげきつつ ひとりぬる夜の あくるまは いかに久しき ものとかはしる
日本語訳
あなたが来てくださらないことを嘆き哀しみながら、夜が明けるまで一人で孤独に過ごす時間が、私にとってどれほど長く感じられるか、あなたはご存知でしょうか。ご存知ないでしょうね。

句の作者

右大将道綱母(935〜995)

右大将道綱母(うだいしょうみちつなのはは)は、平安時代中期の歌人。藤原倫寧の娘として生まれ、藤原兼家の妻で道綱の母でした。「蜻蛉日記(かげろうのにっき)」の作者として知られる人物です。

句の語句語法

嘆きつつ「つつ」は動作や作用の反復・継続を表す接続助詞。「~ながら」の意味。何度も嘆いてため息をつく様子を表す。
ひとり寝る夜「寝(ぬ)る」は動詞「寝(ぬ)」の連体形。平安時代は男性が女性の家に通う通い婚が慣習だったので、「ひとり寝る夜」というのは、夫の来訪がなく孤独に寝る夜のこと。
明くる間は「は」は、強意の係助詞。「夜が明けるまでの間は」の意味。孤独な夜が長く感じるという表現は恋愛歌では常套的で、百人一首の中にもいくつか存在する。
いかに久しきものとかは知る「いかに」は、程度を尋ねる疑問の副詞で、「どれくらい」の意味。「どんなにか~」と問いかける言い方になっている。「と」は、引用の格助詞。「かは」は反語を表す複合の係助詞で、連体形のラ行四段の動詞「知る」と係り結びの関係。よって「どんなに長いものか知っておられるでしょうか?」を意味する。

句の季節・部立

季節・部立

句の出典

出典
拾遺集

句の決まり字

決まり字
なげき

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
Sighing all alone, Through the long watch of the night, Till the break of day:-- Can you realize at all What a tedious thing it is?