百人一首56番 「あらざらむ この世のほかの 思ひ出に いまひとたびの あふこともがな」(和泉式部)の意味と現代語訳
百人一首の56番、和泉式部の歌「あらざらむ この世のほかの 思ひ出に いまひとたびの あふこともがな」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 あらざらむ この世のほかの 思ひ出に いまひとたびの あふこともがな |
日本語訳 わたしはもうすぐ死んでしまうでしょう。わたしのあの世への思い出になるように、せめてもう一度だけあなたにお会いしたいものです。
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句の作者
和泉式部(976〜1030)
和泉式部(いずみしきぶ)は、平安時代中期の歌人で、中古三十六歌仙、女房三十六歌仙の一人でもありました。「和泉式部日記」の作者として知られます。
句の語句語法
あらざらむ | 「あら」はラ変の動詞「あり」の未然形で「生きている」の意味。「む」は推量の助動詞「む」の連体形。よって「生きていないだろう」を意味する。 |
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この世のほかの思ひ出に | 「この世」とは「現世」の意味で、「この世の外」は現世の外の世界、つまり死後の世界を示す。「に」は、目的を表す格助詞で、「~のために」の意味。よって「来世での思い出になるように」という意味。 |
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今ひとたびの | 「今」は、「もう」の意味を表す副詞。「もう一度」の意味。「の」は、連体修飾格の格助詞。 |
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逢ふこともがな | 「逢ふ」は、男女関係を持つことで、「もがな」は願望の終助詞で「~であったらなあ」を意味し、実現が難しい希望を語っている。 |
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句の決まり字
決まり字「あらざ」 |
あらざらむ このよのほかの おもひでに いまひとたびの あふこともがな |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | あらざらむ このよのほかの おもひでに いまひとたびの あふこともがな |
覚え方 | あらざらん今一度の会う 友人との再会を夢見る女の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
Soon I cease to be;--
One fond memory I would keep
When beyond this world.
Is there, then, no way for me
Just once more to meet with thee? |