句の意味・現代語訳

原文
あらざらむ この世のほかの 思ひ出に いまひとたびの あふこともがな
日本語訳
わたしはもうすぐ死んでしまうでしょう。わたしのあの世への思い出になるように、せめてもう一度だけあなたにお会いしたいものです。

句の作者

和泉式部(976〜1030)

和泉式部(いずみしきぶ)は、平安時代中期の歌人で、中古三十六歌仙、女房三十六歌仙の一人でもありました。「和泉式部日記」の作者として知られます。

句の語句語法

あらざらむ「あら」はラ変の動詞「あり」の未然形で「生きている」の意味。「む」は推量の助動詞「む」の連体形。よって「生きていないだろう」を意味する。
この世のほかの思ひ出に「この世」とは「現世」の意味で、「この世の外」は現世の外の世界、つまり死後の世界を示す。「に」は、目的を表す格助詞で、「~のために」の意味。よって「来世での思い出になるように」という意味。
今ひとたびの「今」は、「もう」の意味を表す副詞。「もう一度」の意味。「の」は、連体修飾格の格助詞。
逢ふこともがな「逢ふ」は、男女関係を持つことで、「もがな」は願望の終助詞で「~であったらなあ」を意味し、実現が難しい希望を語っている。

句の季節・部立

季節・部立

句の出典

出典
後拾遺集

句の決まり字

決まり字
あらざ

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
Soon I cease to be;-- One fond memory I would keep When beyond this world. Is there, then, no way for me Just once more to meet with thee?