百人一首73番 「高砂の をのへのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなむ」(大江匡房)の意味と現代語訳
百人一首の73番、前権中納言匡房の歌「高砂の をのへのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなむ」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 高砂の をのへのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなむ |
日本語訳 遠くの山の峰の桜が咲いたようだから、(その手前にある)人里近い山の霞よ、どうか立たないでほしい。(美しい桜を見ていたいから)
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句の作者
前権中納言匡房(1041〜1111)
前権中納言匡房(さきのちゅうなごんまさふさ)は、大江匡房(おおえのまさふさ)のこと。平安時代後期の学者であり、歌人でもありました。大学頭であった、大江成衡のことして生まれ、官位は正二位・権中納言でした。藤原伊房、藤原為房とともに白河朝の「三房」と称された人物です。摂関家にとらわれることなく、政治改革を推進したことでも知られます。
句の語句語法
高砂(たかさご)の | 「高砂」は、砂が高く盛り上がった場所、「高い山」の意味。 |
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尾(を)の上(へ)の桜 | 「尾の上」は「峰(を)の上」で「峰の上」、つまり「山頂」「いただき」を意味する。ともに普通名詞であり、特定の場所を表す固有名詞ではない。兵庫県南西部にある高砂は『後拾遺集』の詞書に「遥かに山の桜を詠める」とあること、及び、瀬戸内海沿岸部であり、松の名所であって桜の名所ではないことから、地形的に合致しない。 |
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咲きにけり | 「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形で、「けり」は初めて気付いたことを表す感動の助動詞。「咲いているなあ!」という詩的な感動を表す。 |
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外山(とやま)の霞(かすみ) | 「外山(とやま)」は人里近い低い山。「深山(みやま)・奥山」の対義語で、「霞(かすみ)」は立春の頃にたつ霧のこと。春にたつのを「霞」、秋にたつのを「霧」と呼ぶ。「霞」は、空気中に浮かぶ小さな水滴やちりなどによって遠くのものが見えなくなる現象で、春に現れるものをいう(秋は霧)。よって桜が咲いた遠くの高い山の手前にある低い山を意味する。 |
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たたずもあらなむ | 「ず」は、打消の助動詞「ず」の連用形。「も」は、強意の係助詞。「なむ」は願望の終助詞で、「立たないでいてくれ」という願いを詠っている。遠くの高山の桜があまり美しいため。 |
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句の決まり字
決まり字「たか」 |
たかさごの をのへのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなむ |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | たかさごの をのへのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなむ |
覚え方 | 鷹と山 山の頂上で鷹を見つける男の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
On that distant mount,
O'er the slope below the peak,
Cherries are in flower;--
May the mists of hither hills
Not arise to veil the scene. |