百人一首85番 「夜もすがら 物思ふころは 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり」(俊恵法師)の意味と現代語訳
百人一首の85番、俊恵法師の歌「夜もすがら 物思ふころは 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 夜もすがら 物思ふころは 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり |
日本語訳 愛しいあなたを思って物思いに沈む一晩中、夜がなかなか明けようとしないので、いつまでも(明け方の光が差し込まない)寝室の隙間さえも私につれなくしているように感じられます。
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句の作者
俊恵法師(1113〜没年不詳)
俊恵法師(しゅんえほうし)は、平安後期の歌人で、東大寺の僧で「俊恵法師」とも呼ばれました。源俊頼の子として生まれた人物でした。平安後期の歌壇における中心的な人物の一人として知られます。選集「歌苑抄」「歌林抄」を編集しました。
句の語句語法
夜もすがら | 「すがら」は、最初から最後まで意味。副詞で「夜通し」、「一晩中」の意味。 |
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もの思ふ頃は | 「もの思ふ」は、恋歌によく出てくるが、「つれない人を想って思い悩む」の意味。「ころ」は、「この頃・夜ごと夜ごと」を意味し、状態が継続していることを示す。よって「毎晩つれない人のことを想って」を意味する。 |
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明けやらで | 下二段動詞「明く」の連用形「明け」に、ラ行四段の補助動詞で「すっかり~し終える」という意味の「やる」の未然形がつき、さらに打消しの接続助詞「で」が結びついている。よって「夜がなかなか明けきらないで」の意味。 |
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ねやのひまさへ | 「閨」は、寝室。「ひま」は、隙間。添加の副助詞「さへ」は「~でさえ」の意味。よって「つれない想い人だけでなく寝室の隙間さえもが」を意味する。 |
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つれなかりけり | ク活用の形容詞「つれなし」の連用形に、詠嘆の助動詞「けり」が接続している。「冷たい・そっけない」の意味。 |
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句の決まり字
決まり字「よも」 |
よもすがら ものおもふころは あけやらで ねやのひまさへ つれなかりけり |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | よもすがら ものおもふころは あけやらで ねやのひまさへ つれなかりけり |
覚え方 | 用もねぇや 特に用事がなくて暇を持て余す女の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
Now,-- as through the night
Longingly I pass the hours,
And the day's dawn lags,--
E'en my bedroom's crannied doors
Heartless are, indeed, to me. |