百人一首86番 「なげけとて 月やは物を 思はする かこち顔なる わが涙かな」(西行法師)の意味と現代語訳
百人一首の86番、西行法師の歌「なげけとて 月やは物を 思はする かこち顔なる わが涙かな」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 なげけとて 月やは物を 思はする かこち顔なる わが涙かな |
日本語訳 「嘆け」といって月が私に物思いをさせるのだろうか。いや、そうではない。本当は恋の悩みだというのに、まるで月のせいであるとばかりにこぼれ落ちる私の涙であるよ。
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句の作者
西行法師(1118〜1190)
西行法師(さいぎょうほうし)は、俗名は佐藤義清。武士出身で、北面の武士として鳥羽院に仕えた過去を持つ人物です。その後出家し、歌人としても活躍しました。和歌は約2300首が伝わるとされ、勅撰集に多く入選したことで知られます。特に「新古今集」には入撰数第1位の94首が入選しました。歌集の「山家集」でも名を知られた人物です。
句の語句語法
嘆けとて | 格助詞「とて」は「~と言って」の意味。よって「月が私に嘆けと言って」を意味する。月を擬人化した表現。 |
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月やはものを思はする | 「やは」は反語を表す複合の係助詞。「する」が結びで、「~するのだろうか?いやそうではない」と訳す。「する」は使役の助動詞「す」の連体形で「やは」の結び。よって「月が物思いにふけらせるのだろうか?いやそうではない」を意味する。三句切れ。 |
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かこち顔なる | 「かこち顔」は恨みに思う顔つきのこと。「かこつ」からきた言葉で「かこつける」、つまり「他人(ここでは月)のせいにする」の意味。よって「(月に)恨みを持つかのような」の意味を表す形容動詞を示す。 |
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わが涙かな | 「かな」は詠嘆の終助詞。 |
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句の決まり字
決まり字「なげけ」 |
なげけとて つきやはものを おもはする かこちがほなる わがなみだかな |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | なげけとて つきやはものを おもはする かこちがほなる わがなみだかな |
覚え方 | 嘆け過去 過去の日記を読みながら嘆く男の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
Is it then the moon
That has made me sad, as though
It had bade me grieve?
Lifting up my troubled face,--
Ah! the tears, the (mournful) tears! |