句の意味・現代語訳

原文
やすらはで 寝なましものを さ夜ふけて かたぶくまでの 月を見しかな
日本語訳
あなたが来ないと知っていたなら、ためらわずにさっさと寝ていただろうに。あなたをお待ちするうちに夜が更けてしまい、とうとう明け方に西に傾こうとする月を眺めてしまいました。

句の作者

赤染衛門(956〜1041)

赤染衛門(あかぞめえもん)は、平安時代中期の歌人で、中古三十六歌仙・女房三十六歌仙の一人でもありました。中宮彰子に仕えました。「栄花物語」の作者という説もある人物ですが、定かではありません。

句の語句語法

やすらはでハ行四段の動詞「やすらふ」の未然形で、「ためらう・ぐずぐずする」の意味。「で」は、打消の接続助詞で、「~ないで」の意味。
寝なましものを「な」は、完了の助動詞「ぬ」の未然形。「まし」は反実仮想(現実には起こらなかったことを、もし起こればと想像すること)の助動詞で、「ものを」は逆接の接続助詞。ここでは「もし~であれば、寝てしまったであろうに」の意味。
さ夜ふけて「さ」は言葉の調子を整えるための接頭語。よって「夜は更けて」の意味。
傾(かたぶ)くまでの「傾(かたぶ)く」は、月が西の山に傾くこと。月は夜の早いうちに東から昇って夜明け前に西に沈んで行くので、「夜明けが近づいた」の意味。「まで」は事柄が至り及ぶ限界を表す副助詞。よって「月が西に沈むまでの」を意味する。
月を見しかな「かな」は詠嘆の終助詞。よって「月を見たことですよ」を意味する。

句の季節・部立

季節・部立

句の出典

出典
後拾遺集

句の決まり字

決まり字
やす

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
Better to have slept Care-free, than to keep vain watch Through the passing night, Till I saw the lonely moon. Traverse her descending path.