句の意味・現代語訳

原文
もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし
日本語訳
私がお前を見て愛しく思うように、お前も私のことを愛しいと思ってくれ、山桜よ。お前以外に私を知る人は(こんな山奥には)いないのだから。

句の作者

前大僧正行尊(1055〜1135)

前大僧正行尊(さきのだいそうじょうぎょうそん)は、平安時代後期の天台宗僧侶であり、歌人でした。源基平の子として生まれました。大僧正を務め、平等院大僧正とも呼ばれました。

句の語句語法

もろともに「一緒に」を意味する副詞。
あはれと思へ 山桜「あはれ」は感動詞「あ」と「はれ」が組み合わさって生まれた形容動詞の語幹。「愛しい・いつくしい」という感動を表す。「思へ」は、ハ行四段の動詞、「思ふ」の命令形で、ここでは「思ってくれ」という依頼を表す。山桜を疑人化し、「山桜よ」、「一緒に愛しいと思っておくれ」と呼びかけている。金葉集の詞書によると、行尊が大峰山(現在の奈良県吉野郡)において、思いがけず山桜を見て詠んだ歌とある。
花より外(ほか)に「花」は「山桜」。「より」は限定を表す格助詞。
知る人もなし「知る人」とは知人ではなく、「自分の理解者」を指す。「知る人もなし」は、大峰山で修行中の孤独な自分にとって、理解者が誰もいないということを表す。

句の季節・部立

季節・部立

句の出典

出典
金葉集

句の決まり字

決まり字
もろ

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
Let us, each for each Pitying, hold tender thought, Mountain-cherry flower! Other than thee, lonely flower, There is none I know as friend.