句の意味・現代語訳

原文
春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなくたたむ 名こそをしけれ
日本語訳
春の夜の短くはかない夢のような、あなたの手枕(添い寝)のために、つまらない浮き名(噂)が立つことにでもなれば、まことに口惜しいことです。

句の作者

周防内侍(1037〜1109)

周防内侍(すおうのないし)は、平安後期の歌人で、女房三十六歌仙の一人でした。40年ほどの長きに渡って天皇に女官として使えた人物でした。本名を「平 仲子」といい、父は「和歌六人党」の一人であった周防守・平棟仲とされています。

句の語句語法

春の夜の夢ばかりなる「春の夜」は、秋の夜(長)の対義語で、短い夜を表す。「夢」もまたはかないものと考えられている。「ばかり」は程度を示す副助詞で、「なる」は断定の助動詞「なり」の連体形。よって「春の夜の夢」は、短い夜に見る、すぐに覚める浅い夢の意味。「ばかり」は、程度を表す副助詞。つまり「短い春の夜の夢のようにはかない」の意味。
手枕(たまくら)に「手枕(たまくら)」とは、腕枕。男女が一夜を過ごした相手にしてあげる行為。千載集の詞書によると、二条院に人々が集まって物語などをして夜を明かしたときに、周防内侍が、「枕がほしい」と静かに告げると、御簾の下から藤原忠家が腕を差し出してきた。その誘いをかわすために詠まれた歌とされる。
かひなく立たむ「かひなく」は「何にもならない・つまらない」の意味。また「手枕(たまくら)」にする「腕(かひな)」は「甲斐」「詮」「効(かい)」の掛詞。「立たむ」の「む」は推量・仮定を表す助動詞で「もし(噂が)立ったら」の意味。
名こそ惜しけれ「名」は「評判・浮き名」の意味。「こそ」は「名」係助詞。「こそ」と「惜しけれ」は、係り結びの関係。よって「ほんの短い時間、腕枕で寝ただけで、浮き名や噂が立ったら、口惜しいではありませんか」を意味する。

句の季節・部立

季節・部立

句の決まり字

決まり字「はるの」
はるのよの ゆめばかりなる たまくらに かひなくたたむ なこそをしけれ

句の語呂合わせ(覚え方)

語呂合わせ
はるのよの ゆめばかりなる たまくらに
かひなくたたむ なこそをしけれ
覚え方春の貝
春の浜辺で貝を拾う男の子

句の出典

出典
千載集

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
If, but through the dreams Of a spring's short night, I'd rest Pillowed on this arm, And my name were blameless stained, Hard, indeed, would be my fate.