2024年6月22日
百人一首67番 「春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなくたたむ 名こそをしけれ」(周防内侍)の意味と現代語訳
百人一首の67番、周防内侍の歌「春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなくたたむ 名こそをしけれ」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなくたたむ 名こそをしけれ
日本語訳 春の夜の短くはかない夢のような、あなたの手枕(添い寝)のために、つまらない浮き名(噂)が立つことにでもなれば、まことに口惜しいことです。
句の作者
周防内侍(1037〜1109)
周防内侍(すおうのないし)は、平安後期の歌人で、女房三十六歌仙の一人でした。40年ほどの長きに渡って天皇に女官として使えた人物でした。本名を「平 仲子」といい、父は「和歌六人党」の一人であった周防守・平棟仲とされています。
句の語句語法
春の夜の夢ばかりなる 「春の夜」は、秋の夜(長)の対義語で、短い夜を表す。「夢」もまたはかないものと考えられている。「ばかり」は程度を示す副助詞で、「なる」は断定の助動詞「なり」の連体形。よって「春の夜の夢」は、短い夜に見る、すぐに覚める浅い夢の意味。「ばかり」は、程度を表す副助詞。つまり「短い春の夜の夢のようにはかない」の意味。 手枕(たまくら)に 「手枕(たまくら)」とは、腕枕。男女が一夜を過ごした相手にしてあげる行為。千載集の詞書によると、二条院に人々が集まって物語などをして夜を明かしたときに、周防内侍が、「枕がほしい」と静かに告げると、御簾の下から藤原忠家が腕を差し出してきた。その誘いをかわすために詠まれた歌とされる。 かひなく立たむ 「かひなく」は「何にもならない・つまらない」の意味。また「手枕(たまくら)」にする「腕(かひな)」は「甲斐」「詮」「効(かい)」の掛詞。「立たむ」の「む」は推量・仮定を表す助動詞で「もし(噂が)立ったら」の意味。 名こそ惜しけれ 「名」は「評判・浮き名」の意味。「こそ」は「名」係助詞。「こそ」と「惜しけれ」は、係り結びの関係。よって「ほんの短い時間、腕枕で寝ただけで、浮き名や噂が立ったら、口惜しいではありませんか」を意味する。
句の決まり字
決まり字「はるの」
はるの よの ゆめばかりなる たまくらに かひなくたたむ なこそをしけれ
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ
句 はるの よの ゆめばかりなる たまくらにかひ なくたたむ なこそをしけれ
覚え方 春の貝 春の浜辺で貝を拾う男の子
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳
If, but through the dreams
Of a spring's short night, I'd rest
Pillowed on this arm,
And my name were blameless stained,
Hard, indeed, would be my fate.