句の意味・現代語訳

原文
心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな
日本語訳
心ならずも、このつらい現世に生きながらえたなら、きっと恋しく思い出されるに違いない、この夜更けの月であるなあ。

句の作者

三条院(976〜1017)

三条院(さんじょういん)は、第67代天皇で、冷泉天皇の第二皇子でした。病気がちだったとされ、生前に一条天皇に譲位しました。

句の語句語法

心にもあらで「心」は、本心・本意。「に」は断定の助動詞「なり」の連体形、「で」は打消の接続助詞。よって「心ならずも・自分の本意ではなく」の意味。また、この場合の本心とは、「心にも あらでうき世に ながらへば」とあるので、早くこの世を去りたいと思っていることを表す。
うき世「浮世・現世」または、「つらいこの世の中で」の意味。
ながらへば「生き長らえているならば」という仮定の意味を表す。下二段動詞「ながらふ」の未然形に接続助詞「ば」が付き、仮定条件を表し、「これから長く生きているとすれば」という未来を想像する内容になっている。
恋しかるべき「べき」は当然を表す推量の助動詞「べし」の連体形で、「夜半の月」にかかる。「~はずだ」の意味。
夜半(よは)の月かな「夜半(よは)」は夜中や夜更けのことで、「かな」は詠嘆の終助詞。よって「この夜更けの月のことがなあ」という意味。

句の季節・部立

季節・部立

句の出典

出典
後拾遺集

句の決まり字

決まり字
こころに

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
If, against my wish, In the world of sorrows still, I for long should live;-- How then I would pine, alas! For this moon of middle-night.