百人一首68番 「心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな」(三条院)の意味と現代語訳
百人一首の68番、三条院の歌「心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな |
日本語訳 心ならずも、このつらい現世に生きながらえたなら、きっと恋しく思い出されるに違いない、この夜更けの月であるなあ。
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句の作者
三条院(976〜1017)
三条院(さんじょういん)は、第67代天皇で、冷泉天皇の第二皇子でした。病気がちだったとされ、生前に一条天皇に譲位しました。
句の語句語法
心にもあらで | 「心」は、本心・本意。「に」は断定の助動詞「なり」の連体形、「で」は打消の接続助詞。よって「心ならずも・自分の本意ではなく」の意味。また、この場合の本心とは、「心にも あらでうき世に ながらへば」とあるので、早くこの世を去りたいと思っていることを表す。 |
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うき世 | 「浮世・現世」または、「つらいこの世の中で」の意味。 |
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ながらへば | 「生き長らえているならば」という仮定の意味を表す。下二段動詞「ながらふ」の未然形に接続助詞「ば」が付き、仮定条件を表し、「これから長く生きているとすれば」という未来を想像する内容になっている。 |
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恋しかるべき | 「べき」は当然を表す推量の助動詞「べし」の連体形で、「夜半の月」にかかる。「~はずだ」の意味。 |
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夜半(よは)の月かな | 「夜半(よは)」は夜中や夜更けのことで、「かな」は詠嘆の終助詞。よって「この夜更けの月のことがなあ」という意味。 |
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句の決まり字
決まり字「こころに」 |
こころにも あらでうきよに ながらへば こひしかるべき よはのつきかな |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | こころにも あらでうきよに ながらへば こひしかるべき よはのつきかな |
覚え方 | 心に小石 心型の小石を見つけて喜ぶ女の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
If, against my wish,
In the world of sorrows still,
I for long should live;--
How then I would pine, alas!
For this moon of middle-night. |