句の意味・現代語訳

原文
玉の緒よ たえなばたえね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする
日本語訳
我が命よ、絶えることなら早く絶えてしまえ。このまま生き永らえていると、恋心を耐え忍んでいる私の心が弱ってしまうと困るから。

句の作者

式子内親王(1149〜1201)

式子内親王(しょくし / しきし / のりこないしんのう)は、平安末期から鎌倉時代初期にかけての歌人で、後白河天皇の大参考所として生まれました。歌は藤原俊成に師事し、後に出家しました。新三十六歌仙、女房三十六歌仙の一人に数えられる人物です。

句の語句語法

玉の緒よもともとは、首飾りなどに使われる玉を貫いた緒(ひも)。ここでは「魂を身体につないでおく緒」の意味で使われている。「絶え」「ながらへ」「よわり」は、緒の縁語で、どれも緒の状態に関係している。「よ」は、呼びかけの間投助詞。
絶えなば絶えねヤ行下二段動詞「絶ゆ」の連用形に完了の助動詞「ぬ」の未然形「な」と接続助詞「ば」で、順接の仮定条件「絶えてしまうのなら」になる。下の「絶えね」の「ね」は完了の助動詞「ぬ」の命令形で、「絶えてしまえ!」という意味。よって「絶えてしまうのなら絶えてしまえ!」という意味の語気の強い言葉を表す。二句切れ。
ながらえば「絶えなば」と同じく、ハ行下二段動詞「ながらふ」の未然形に接続助詞「ば」がついて、順接の確定条件を示す。「生きながらえるならば」の意味。
忍ぶることの上二段動詞「忍ぶ」の連体形。よって「堪え忍ぶ」の意味。「の」は、主格の格助詞。
よわりもぞする係助詞「も」と「ぞ」が重なり、「~すると困る」の意味。「する」は、サ変の動詞「す」の連体形で、「ぞ」の結び。「も」と「ぞ」は、強意の係助詞。「もぞ」で、「~する」と困るの意味。よって「秘めた恋を堪え忍ぶ気持ちが弱くなって、恋が露見すると困る」を意味する。

句の季節・部立

季節・部立

句の出典

出典
新古今集

句の決まり字

決まり字
たま

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
Life! Thou string of gems! If thou art to end, break now. For, if yet I live, All I do to hide ( my love) May at last grow weak (and fail).