百人一首90番 「見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色はかはらず」(殷富門院大輔)の意味と現代語訳
百人一首の90番、殷富門院大輔の歌「見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色はかはらず」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色はかはらず |
日本語訳 私の血の涙に濡れて色が変わってしまった私の袖を、あなたにお見せしたいものです。あの雄島の漁師の袖でさえ、毎日波をかぶって濡れに濡れても色は変わらないというのに。
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句の作者
殷富門院大輔(1130〜1200)
殷富門院大輔(いんぷもんいんのたいふ)は、平安末期の歌人で、女房三十六歌仙の一人に数えられる人物です。藤原信成の娘として生まれました。
句の語句語法
見せばやな | 「ばや」は願望の終助詞で、「な」は詠嘆の終助詞。「見せ」は、下二段の動詞「見す」の未然形。よって「見せたいものだ」の意味。初句切れ。 |
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雄島(をじま)の蜑(あま)の | 「雄島(をじま)」は歌枕で、歌枕としても有名な宮城県の松島湾にある島のひとつ。「蜑(あま)」は漁師のことで、海女と違い男女どちらも示す。 |
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袖だにも | 「だに」は軽いものを取り上げて重いものを類推させる副助詞。「~でさえ」の意味。よって「袖でさえ」の意味。「も」は、強意の係助詞。 |
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ぬれにぞぬれし | 「ぬれ」は、ラ行下二段の動詞「ぬる」の連用形。「に」は、同じ動詞の間に入れて表現を強調する格助詞。「ぞ」は、強意の係助詞。「し」は、過去の助動詞「き」の連体形で、「ぞ」の結び。四句切れ。 |
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色は変はらず | 「色」は、袖の色。「は」は、区別を表す係助詞。中国の故事によるもので、袖の色が変わるのは、泣きすぎて涙が枯れ、ついには血の涙が流れるためとする。よって「漁師の袖の色は変わっていない」が、「私の袖の色は血の涙のせいで変わった」ことを表す。 |
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句の決まり字
決まり字「みせ」 |
みせばやな をじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかはらず |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | みせばやな をじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかはらず |
覚え方 | 見せぬ 秘密を見せないようにする男の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
Let me show him these!
E'en the fisherwomen's sleeves
On Ojima's shores,
Though wet through and wet again,
Do not change their dyer's hues. |