百人一首91番 「きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む」(九条良経)の意味と現代語訳
百人一首の91番、後京極摂政前太政大臣の歌「きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む |
日本語訳 こおろぎがしきりに鳴く霜の降る寒々とした夜に、むしろの上に衣の片袖を敷いて、私はたった一人で寂しく寝るのだろうか。
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句の作者
後京極摂政前太政大臣(1169〜1206)
後京極摂政前太政大臣(ごきょうごくせっしょうさきのだいじょうだいじん)は、九条良経(くじょうよしつね)のこと。平安末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した、公家であり、歌人でもありました。九条兼実の次男として生まれ、官位は従一位・摂政、太政大臣を歴任しました。藤原俊成に師事し、新古今和歌集の仮名序を執筆した人物として知られ、漢詩にも優れた人物として知られます。
句の語句語法
きりぎりす | コオロギ |
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鳴くや霜夜(しもよ)の | 「鳴く」は動詞の連体形で、霜夜にかかる。「や」は7文字の文字数(語調)を整えるための間投助詞。「霜夜(しもよ)」は「霜の降りる晩秋の寒い夜」のこと。よって「こおろぎが鳴く霜の降る寒い夜の」を意味する。 |
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さむしろに | 「さ」は言葉を整える接頭語。「むしろ」は藁などで編んだ敷物で、シートのように使われた。「さむしろ」は「寒し」との掛詞になっている。 |
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衣かたしき | 平安時代は、男性と女性が一緒に寝る場合は、お互いの着物の袖を枕代わりに敷いていた。「片敷き」は自分の袖を自分で敷く寂しい独り寝のこと。 |
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ひとりかも寝む | 「か」は疑問の係助詞で「も」は強意の係助詞。「む」は推量の助動詞「む」の連体形で、「か」の結び。よって「独りで寝るんだろうか」の意味。 |
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句の決まり字
決まり字「きり」 |
きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ |
覚え方 | きりぎりすの衣は固い 硬い服を着たきりぎりすを観察する女の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
On a chilling mat,
Drawing close my folded quilt,
I must sleep alone,
While all through the frosty night
Sounds a cricket's (forlorn chirp). |