句の意味・現代語訳

原文
きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む
日本語訳
こおろぎがしきりに鳴く霜の降る寒々とした夜に、むしろの上に衣の片袖を敷いて、私はたった一人で寂しく寝るのだろうか。

句の作者

後京極摂政前太政大臣(1169〜1206)

後京極摂政前太政大臣(ごきょうごくせっしょうさきのだいじょうだいじん)は、九条良経(くじょうよしつね)のこと。平安末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した、公家であり、歌人でもありました。九条兼実の次男として生まれ、官位は従一位・摂政、太政大臣を歴任しました。藤原俊成に師事し、新古今和歌集の仮名序を執筆した人物として知られ、漢詩にも優れた人物として知られます。

句の語句語法

きりぎりすコオロギ
鳴くや霜夜(しもよ)の「鳴く」は動詞の連体形で、霜夜にかかる。「や」は7文字の文字数(語調)を整えるための間投助詞。「霜夜(しもよ)」は「霜の降りる晩秋の寒い夜」のこと。よって「こおろぎが鳴く霜の降る寒い夜の」を意味する。
さむしろに「さ」は言葉を整える接頭語。「むしろ」は藁などで編んだ敷物で、シートのように使われた。「さむしろ」は「寒し」との掛詞になっている。
衣かたしき平安時代は、男性と女性が一緒に寝る場合は、お互いの着物の袖を枕代わりに敷いていた。「片敷き」は自分の袖を自分で敷く寂しい独り寝のこと。
ひとりかも寝む「か」は疑問の係助詞で「も」は強意の係助詞。「む」は推量の助動詞「む」の連体形で、「か」の結び。よって「独りで寝るんだろうか」の意味。

句の季節・部立

季節・部立

句の決まり字

決まり字「きり」
きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ

句の語呂合わせ(覚え方)

語呂合わせ
きりぎりす なくやしもよの さむしろに
ころもかたしき ひとりかもねむ
覚え方きりぎりすの衣は固い
硬い服を着たきりぎりすを観察する女の子

句の出典

出典
新古今集

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
On a chilling mat, Drawing close my folded quilt, I must sleep alone, While all through the frosty night Sounds a cricket's (forlorn chirp).