句の意味・現代語訳

原文
おほけなく うき世の民に おほふかな わが立つ杣に 墨染の袖
日本語訳
身のほど知らずと言われるかもしれないが、このつらい悲しみに満ちた世を生きる人々の上に、出家して比叡山に住みはじめた私の墨染の袖をかぶせて、包み込んでやろうと願うのだ。

句の作者

前大僧正慈円(1155〜1225)

前大僧正慈円(さきのだいそうじょうじえん)は、慈円(じえん)のこと。平安時代末期から、鎌倉時代前期に生きた天台宗の僧であり歌人でした。歴史書である「愚管抄」と著したことで知られる人物です。父は関白藤原忠通で、摂政関白・九条兼実の弟でもありました。

句の語句語法

おほけなくク活用の形容詞「おほけなし」の連用形。「おほけなし」は「身分分相応だ・身の程をわきまえない・恐れ多い」の意味。慈円は時の関白の息子で高い身分だったが、謙遜していることを示す。
うき世の民「うき世」は「憂き世・辛い世の中」の意味。慈円の生きた時代は、保元・平治の乱など戦さが続いていた。「民」は、世間一般の人々。
おほふかな「おほふ」は、「覆う」で、墨染の衣、すなわち、仏の功徳で覆うこと。この場合は作者が僧なので、仏の功徳によって人民を護り救済を祈ることを指す。「おほふ」は「袖」と縁語。「かな」は、詠嘆の終助詞。よって「(墨染の袖で)覆うことだよ」の意味。
わがたつ杣(そま)に「杣」は植林した木を切り出す山、つまり「杣山(そまやま)」を示し、ここでは比叡山を指す。よって「私が入り住むこの山で」の意味。この句は、比叡山の根本中堂(こんぽんちゅうどう)を建てるときに最澄(伝教大師)が詠んだ「~我が立つ杣に冥加あらせ給へ(私が入り立つこの杣山に加護をお与えください」という歌をふまえている。
墨染の袖僧侶の着る墨染めの衣の袖。「墨染」と「住み初め(住みはじめること)」の掛詞で、前の「おほふかな」に続く倒置法を使っている。

句の季節・部立

季節・部立

句の決まり字

決まり字「おほけ」
おほけなく うきよのたみに おほふかな わがたつそまに すみぞめのそで

句の語呂合わせ(覚え方)

語呂合わせ
おほけなく うきよのたみに おほふかな
わがたつそまに すみぞめのそで
覚え方OKわかった
友達とハイタッチする女の子

句の出典

出典
千載集

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
Though I am not fit, I have dared to shield the folk Of this woeful world With my black-dyed (sacred) sleeve:-- I, who live on Mount Hiei.