句の意味・現代語訳

原文
ももしきや 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり
日本語訳
宮中にある古びた軒から下がっている「忍ぶ草」を見るにつけても、しのんでもしのびつくせないほどものは、古きよき時代(天皇親政時代)のことであるよ。

句の作者

順徳院(1197〜1242)

順徳院(じゅんとくいん)は、日本の第84代天皇。在位は1210年12月12日から1221年5月13日でした。後鳥羽天皇の第三皇子でした。承久の乱で破れた結果、北条義時によって、佐渡へ流刑とされ、その後佐渡にて崩御しました。主な著作に有職故実書である『禁秘抄』が挙げられます。

句の語句語法

百敷(ももしき)や「百敷(ももしき)」は「内裏」や「宮中」の意味で、「や」は詠嘆の間投助詞。
古き軒端(のきば)の宮中の古びた建物の軒の端、つまり屋根の端。
しのぶにも「しのぶ」は「昔の栄華を懐かしく思う」という意味と、軒からぶら下がっている「忍ぶ草=ノキシノブ」を掛けた掛詞。ノキシノブはシダの一種で、荒れ果てた家などによく見られ、荒廃を象徴する草。皇室の権威の衰退も示している。
なほあまりある「なほ」は「やはり」を意味する副詞。「あまりある」は「(偲んでも)ありあまりほど」、つまり「しのんでもしのびきれない」という意味。
昔なりけり「けり」は初めて気付いたことを表す詠嘆の助動詞の終止形。よって「昔なのだなあ」という意味。この「昔」は、天皇に権威があった過去の時代、醍醐天皇や村上天皇の在位していた延喜(えんぎ)・天暦(てんりゃく)の時代を指す。

句の季節・部立

季節・部立

句の決まり字

決まり字「もも」
ももしきや ふるきのきばの しのぶにも なほあまりある むかしなりけり

句の語呂合わせ(覚え方)

語呂合わせ
ももしきや ふるきのきばの しのぶにも
なほあまりある むかしなりけり
覚え方桃、なお余り
桃の果実を抱えた男の子

句の出典

出典
続後撰集

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
O Imperial House! When I think of former days, How I long for thee! More than e'en the clinging vines Hanging 'neath thine ancient eaves.