句の意味・現代語訳

原文
名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人にしられで 来るよしもがな
日本語訳
恋しい人に逢える「逢う」という名の逢坂山、一緒にひと夜を過ごせる「さ寝」という名の「小寝葛(さねかずら)」が、その名に違わぬのであれば、逢坂山のさねかずらをたぐり寄せるように、誰にも知られずあなたを連れ出す方法を知りたいものです。

句の作者

三条右大臣(873〜932)

三条右大臣(さんじょうのうだいじん)は、藤原定方(ふじわらのさだかた)のこと。平安時代の貴族であり、歌人。平安時代前期から中期にかけて活躍し、管弦の名手としても知られた人物でした。当時の内大臣であった「藤原高藤」の次男として生まれ、第60代天皇である「醍醐天皇」の外叔父に当たる人物。勧修寺の南に位置する鍋岡山(なべおかやま)の北西に墓があります。

句の語句語法

名にしおはば「名におふ(負ふ)」は「~という名をもつ」を意味する。「し」は強意の副助詞で、動詞「負(お)ふ」の未然形に接続助詞「ば」がつく順接の仮定を示す。よって「名にしおはば」は「〜という名前を持っているのであれば」と解釈できる。
逢坂山(あふさかやま)歌枕。山城国(現在の京都府)と近江国(現在の滋賀県)の境にあった山。関所があった。男女が共に寝るという意味の「逢ふ」との掛詞。
さねかずらモクレン科の蔓草(つる性の植物)で、「五味子(ごみし)」とも呼ばれる。「小寝(さね)」との掛詞。
小寝(さね)一緒に寝ること。
人に知られで「人」は「他の人」の意、「で」は打消の接続助詞。「他の人に知られないで」という意味。
くるよしもがな「くる」は「来る」と「繰る」の掛詞。「繰る」は「(人を)たぐり寄せる(連れてくる)」という意味で、「さねかづら」の縁語でもある。「よし」は「方法」の意。「もがな」は願望の終助詞。よって「くるよしもがな」は「(あなたを)連れて来る方法あればなぁ」という意味。

句の季節・部立

季節・部立

句の決まり字

決まり字「なにし」
なにしおはば あふさかやまの さねかづら ひとにしられで くるよしもがな

句の語呂合わせ(覚え方)

語呂合わせ
なにしおはば あふさかやまの さねかづら
ひとにしられで くるよしもがな
覚え方何し、人にし
何かをしている人を見ている女の子

句の出典

出典
後撰集

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
If thy name be true, Trailing vine of "Meeting Hill," Is there not some way Whereby, without ken of men, I can draw thee to my side?