句の意味・現代語訳

原文
みかの原 わきて流るる いづみ川 いつみきとてか 恋しかるらむ
日本語訳
みかの原を湧き出て流れる泉川よ。(その「いつ」という言葉ではないが) いったいいつ逢ったといって、こんなに恋しいのだろうか。(本当は一度も逢ったことがないのに)

句の作者

中納言兼輔(877〜933)

中納言兼輔(ちゅうなごんかねすけ)は、藤原兼輔(ふじわらのかねすけ)のこと。三十六歌仙の一人として活躍した、平安時代前期の公卿であり歌人でもあります。加茂川堤近くに邸宅があったことから、堤中納言と呼ばれました。

句の語句語法

みかの原「瓶原(みかのはら)」と書く。山城国(京都府)の南部にある木津川市を指し、聖武天皇の時代に、しばらく恭仁京(くにきょう)が置かれた。
わきて流るる「わき」は「分き」と「湧き」の掛詞。「分き」は四段動詞「分く」の連用形で「分けて」という意味。「湧き」は「泉」の縁語。以上から、わきて流るるは「分けて流れる」と「湧き出て流れる」の2つの意味を持つ。
泉川現在の木津川のこと。また「泉川」までが序詞。
いつ見きとてか「見」は「逢う」の意味。「き」は過去の助動詞で過去の直接体験を表現する。また「か」は疑問の係助詞。後の「恋しかるらむ」と係り結びをつくる。「いつ逢ったというのか」という意味。
恋しかるらむ「恋しかる」は形容詞「恋し」の連体形で「らむ」は現在推量の助動詞。「恋しいのだろうか」という意味で解釈できる。また「いつ見きとてか」の「か」の結びである。

句の季節・部立

季節・部立

句の決まり字

決まり字「みかの」
みかのはら わきてながるる いづみがは いつみきとてか こひしかるらむ

句の語呂合わせ(覚え方)

語呂合わせ
みかのはら わきてながるる いづみがは
いつみきとてか こひしかるらむ
覚え方みかの原いつ見聞き?
原っぱで遠くを見つめる女の子

句の出典

出典
新古今集

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
Over Mika's plain, Gushing forth and flowing free, Is Izumi's stream. I know not if we have met: Why, then, do I long for her?