百人一首29番 「心当てに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花」(凡河内躬恒)の意味と現代語訳
百人一首の29番、凡河内躬恒の歌「心当てに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 心当てに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花 |
日本語訳 もし手折(たお)るならば、当てずっぽうに折ってみようか。一度初霜がおりて、区別しにくくなっている白菊の花を。
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句の作者
凡河内躬恒(898〜922)
凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)は、三十六歌仙の一人。平安前期の歌人で、簡易には恵まれなかったものの、紀貫之と並ぶ歌壇の中核的な人物とされました。「古今集」撰者の一人でもありました。
句の語句語法
心あてに | 「に」は、手段・方法の格助詞。体言+格助詞「に」で連用修飾格を表す。よって「当てずっぽうで(~する)」を意味する。六音で字余り。 |
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折らばや折らむ | 「折らば」は四段活用動詞「折る」の未然形に接続助詞「ば」がついたもので、仮定条件を表す。「や」は疑問の係助詞。「む」は意志の助動詞の連体形で、上の「や」と係り結びの関係。よって「もし折るならば、折ってみようか」を意味する。二句切れ。 |
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初霜の | その年の最初におりる霜。あるいは、晩秋に降る霜。「の」は、主格の格助詞。 |
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置きまどはせる | 「置く」は、「(霜が)降りる」の意味。「まどはせ」は、動詞「まどはす」の命令形、または已然形とする説もあり、「まぎわらしくする」の意味。「る」は、存続の助動詞「り」の連体形で、動詞の活用語尾ではない。よって「白菊の上に白い初霜が降りて、初霜なのか白菊なのか、見分けにくくなっている」を意味する。 |
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白菊の花 | 上の句の「折らばや」と同様の倒置法を使用している。 |
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句の決まり字
決まり字「こころあ」 |
こころあてに をらばやをらむ はつしもの おきまどはせる しらぎくのはな |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | こころあてに をらばやをらむ はつしもの おきまどはせる しらぎくのはな |
覚え方 | こころ青 青い空の下で心を落ち着ける女の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
If it were my wish
White chrysanthemum to cull;--
Puzzled by the frost
Of the early autumn time,
I by chance might pluck the flower. |