百人一首31番 「朝ぼらけ 有明の月と見るまでに 吉野の里に 降れる白雪」(坂上是則)の意味と現代語訳
百人一首の31番、坂上是則の歌「朝ぼらけ 有明の月と見るまでに 吉野の里に 降れる白雪」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 朝ぼらけ 有明の月と見るまでに 吉野の里に 降れる白雪 |
日本語訳 夜がほのかに明るくなってきた明け方頃、あたかも有明の月かと思うほどに、吉野の里には白雪が降り積もっているではないか。
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句の作者
坂上是則(1185〜没年不詳)
坂上是則(さかのうえのこれのり)は、征夷大将軍を務めた、坂上田村麻呂の子孫と伝えられる、平安前期の歌人です。三十六歌仙の一人に名を連ねていました。
句の語句語法
朝ぼらけ | 夜が明けて、ほのかに周囲が明るくなってくる頃。暁、曙(あけぼの)・東雲(しののめ)、朝ぼらけの順で明るくなる。 |
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有明の月 | 「有明」は、陰暦で16日以後月末にかけて、月の欠けと同時に月の入りが遅くなり、明け方まで空に残っている月のこと。あるいは、空に月が残ったまま夜が明けることを表す。 |
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見るまでに | 視覚の「見る」ではなく、思考の「思う・判断する」の意味。「まで」は極端な程度を表す副助詞で、「~ほど・くらい」を表す。よって「思うばかりに」を意味する。実際に「有明の月」を見ているわけではなく、雪の白さを強調するために「有明の月かと思うほど」と表現している。 |
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吉野の里 | 吉野は、奈良県吉野郡のあたり一帯を指す。山間部で雪が多い場所。春は桜、冬は雪の名所として、平安時代に名高い山里だった。 |
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ふれる白雪 | 「ふれ」は、動詞「降(ふ)る」の命令形。「る」は、存続・継続を示す助動詞「り」の連体形で、「ふれる」は「降っている」の意味。「体言止め」を使用している。よって「雪が降り続いている」を意味する。「ふれる(降れる・触れる・振れる)」は「降(ふ)れ+る」の二語であり、一語の動詞ではない。 |
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句の決まり字
決まり字「あさぼらけ あ」 |
あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき |
覚え方 | 朝ぼらけ有明の吉野 朝焼けの中、有明の吉野を歩く女の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
At the break of day,
Just as though the morning moon
Lightened the dim scene,
Yoshino's fair hamlet lay
In a haze of falling snow. |