句の意味・現代語訳

原文
山川に 風のかけたる しがらみは ながれもあへぬ 紅葉なりけり
日本語訳
山あいの谷を流れる川に風が架けた美しい流れ止めの柵(しがらみ)は、流れきらずにいる紅葉だったのだなあ。

句の作者

春道列樹(生年不詳〜920)

春道列樹(はるみちのつらき)は、平安前期の歌人で、官人でもありました。壱岐守に任ぜられたものの、壱岐(九州)に赴任する前の920年に亡くなってしまいました。

句の語句語法

山川(やまがわ)に山の中にある川、谷川のこと。「やまがわ」ではなく「やまかわ」と読むと、「山と川」の意味に変わる。詞書に、「志賀の山ごえにてよめる」とあるので、この場合、京都から大津へと抜ける山中の川を指す。「に」は、場所を表す格助詞。
風のかけたるしがらみは「の」は、主格の格助詞。「たる」は、動詞の連用形に接続しているので、完了の助動詞「たり」の連体形。ここでは「風」が擬人化され、「風がしがらみを掛けた」と表現されている。「柵(しがらみ)」は、川の流れを堰き止めるために、川の中に杭を打って竹を横に張ったもの。
流れもあへぬ「も」は、強意の係助詞。「動詞+あへ」で、「完全に~する」を意味し、「あへ」+打消の助動詞の連体形「ぬ」で「完全に~しきらない・しきれない」の意味。よって「流れようとしても流れきれない」を意味する。
紅葉なりけり紅葉を柵(しがらみ)に見立ている。「なり」は、断定の助動詞。「けり」は詠嘆の助動詞で、今まで意識していなかったことに気づいた驚きや感動を表す。

句の季節・部立

季節・部立

句の決まり字

決まり字「やまが」
やまがはに かぜのかけたる しがらみは ながれもあへぬ もみぢなりけり

句の語呂合わせ(覚え方)

語呂合わせ
やまがはに かぜのかけたる しがらみは
ながれもあへぬ もみぢなりけり
覚え方山が流れる
山から流れる川を眺める男の子

句の出典

出典
古今集

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
In a mountain stream, Builded by the busy wind, Is a wattled-barrier drawn. Yet 'tis only maple leaves Powerless to flow away.