百人一首33番 「久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ」(紀友則)の意味と現代語訳
百人一首の33番、紀友則の歌「久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ |
日本語訳 こんなに陽の光がのどかに降り注いでいる春の日なのに、どうして桜の花は落ち着いた心もなく散ってしまうのだろう。
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句の作者
紀友則(850〜904)
紀友則(きのとものり)は、平安時代前期の官人であり、歌人として活躍しました。紀貫之の従兄弟であり、三十六歌仙の一人でした。「古今集」撰者の一人であったものの、「古今集」が完成する前に亡くなっています。
句の語句語法
ひさかたの | 「天・日・月・空・雲・雨」など天空や気象に関するものに掛かる。ここでは「光」にかかる枕詞となっている。 |
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光のどけき | 「のどけき」は、形容詞「のどけし」の連体形で、「のどかだ・穏やかだ」の意味。よって「光のどけき」で、「春の日」を修飾する連体修飾格となり、「日の光が穏やか」を意味する。 |
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静心なく | 「静心(しづごころ)」は「落ち着いた心」の意味。「静心なく」で、「散るらむ」を修飾する連用修飾格となり、「落ち着いた心がなく」を意味する。散る桜の花を擬人化している。また、「のどけき(のどかだ・穏やかだ)」と「静心なく(落ち着いた心がなく)」の対照的な表現となっている。 |
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花の散るらむ | 花は桜を示す。「の」は、主格の格助詞。「らむ」は目に見える場所での原因を推量する助動詞で、「どうして~だろう」の意味。よって「どうして、心静めずに桜は散っているのだろうか」を意味する。 もしくは、「花の散る」原因を「静心なく」とし、「落ち着いた心がないので、花は散るのだろう」とする説もある。 |
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句の決まり字
決まり字「ひさ」 |
ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しづこころなく はなのちるらむ |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しづこころなく はなのちるらむ |
覚え方 | 久方の静 静かな森の中で瞑想する女の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
In the cheerful light
Of the ever-shining Sun,
In the days of spring;
Why, with ceaseless, restless haste
Falls the cherry's new-blown bloom? |