百人一首50番 「君がため 惜しからざりし いのちさへ 長くもがなと 思ひけるかな」(藤原義孝)の意味と現代語訳
百人一首の50番、藤原義孝の歌「君がため 惜しからざりし いのちさへ 長くもがなと 思ひけるかな」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 君がため 惜しからざりし いのちさへ 長くもがなと 思ひけるかな |
日本語訳 あなたのために惜しくなかった私の命でさえ、こうしてあなたと逢瀬を遂げた今となっては、いつまでも長く生きていたいと思うようになったよ。
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句の作者
藤原義孝(954〜974)
藤原義孝(ふじわらのよしたか)は、平安時代の公家であり、歌人でもありました。摂政太政大臣・藤原伊尹の三男として生まれ、子に三蹟として知られる藤原行成がいました。最期は天然痘で亡くなったと伝えられています。
句の語句語法
君がため | 「君」は、恋人の女性。「が」は、連体修飾格の格助詞。「君がため」で、「彼女のため」という意味だが、ここでは「あなたと逢うために」という気持ちを表す。「後拾遺集」の詞書に、義孝が「女のもとより帰りてつかはしける」とあり、逢瀬をとげて帰宅した後に詠まれた後朝の歌であることがわかる。 |
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惜しからざりし | 捨てても「惜しくなかった」の意味。「ざりし」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、「思わなかった」と過去の自分を思い出している。 |
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命さへ | 「さへ」は「~までも」の意味で、添加の副助詞。「命までも」の意味。 |
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長くもがなと思ひけるかな | 「長くあってほしい」の意味で、「もがな」は願望の終助詞。「~であればいいなあ」を意味する。引用の格助詞。 「ける」は、詠嘆の助動詞「けり」の連体形で、今まで意識していなかったことに気づいた驚きや感動を表す。よって「逢瀬を遂げた時から変わってきた気持ちに、今はじめて気が付いた」を意味する。つまり、「以前は恋のためなら命さえ惜しくないと思っていたが、結ばれた今では、できるだけ命長らえ、あなたと長く逢い続けていたい」を意味する。 |
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句の決まり字
決まり字「きみがため を」 |
きみがため をしからざりし いのちさへ ながくもがなと おもひけるかな |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | きみがため をしからざりし いのちさへ ながくもがなと おもひけるかな |
覚え方 | 君がため、尾長く 恋人のために長い尾のリボンをプレゼントする男の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
For thy precious sake,
Once my (eager) life itself
Was not dear to me.
But 'tis now my heart's desire
It may long, long years endure. |