句の意味・現代語訳

原文
あけぬれば 暮るるものとは 知りながら なほうらめしき 朝ぼらけかな
日本語訳
夜が明けてしまうと、やがてまた日が暮れて夜になって、あなたに逢えると分かっているものの、それでも恨めしい(あなたと分かれる)夜明けだなあ。

句の作者

藤原道信朝臣(972〜994)

藤原道信朝臣(ふじわらのみちのぶあそん)は、太政大臣・藤原為光の三男として生まれた、平安中期の貴族で歌人でした。中古三十六歌仙の一人。従四位上・左近衛中将を官位としたものの、23歳で早くに亡くなりました。

句の語句語法

明けぬれば完了の助動詞の已然形+接続助詞「ば」で、順接の確定条件。「ば」は、恒時条件を表し、「~と、~といつも」の意味。よって「夜が明けてしまえば」を意味し、男性が女性の家から帰る時が来たことを表す。
暮るるものとは「と」は、引用の格助詞。「は」は、強意の係助詞。夜明けは別れを表し、日暮れは再会を表す。よって「日は必ず暮れて(またあなたと逢える)」の意味。
知りながら「(心では)分かっているものの」の意味で、「ながら」は逆接の接続助詞。
なほ「それでも」の意味の副詞。
朝ぼらけ「明け方・辺りがほのぼのと明るくなってきた頃」の意味。秋または冬に用いられる語で、恋歌では大体、一緒に夜を過ごした男女が別れる、男性が女性のもとから立ち去る頃を暗示している。「後拾遺集」の詞書には、「女のもとより雪降り侍る日帰りてつかはしける」とあり、雪の降る朝に恋人(女性)の家から帰った若者が、一人さびしく詠んだ後朝の歌であることがわかる。

句の季節・部立

季節・部立

句の決まり字

決まり字「あけ」
あけぬれば くるるものとは しりながら なほうらめしき あさぼらけかな

句の語呂合わせ(覚え方)

語呂合わせ
あけぬれば くるるものとは しりながら
なほうらめしき あさぼらけかな
覚え方開けな、ほぉら
プレゼントを開けて驚く女の子

句の出典

出典
後拾遺集

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
Though I know full well That the night will come again E'en when day has dawned, Yet, in truth, I hate the sight Of the morning's coming light.