百人一首57番 「めぐりあひて 見しやそれとも わかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな」(紫式部)の意味と現代語訳
百人一首の57番、紫式部の歌「めぐりあひて 見しやそれとも わかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 めぐりあひて 見しやそれとも わかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな |
日本語訳 せっかく久しぶりにめぐり逢えたのに、あなたなのかどうかも分からないほどの短い時間であっという間に帰ってしまわれました。まるで、雲隠れしてしまった夜中の月のようでしたね。
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句の作者
紫式部(978〜1014)
紫式部(むらさきしきぶ)は、平安時代を代表する文学作品「源氏物語」の作者である、平安時代中期の作家、また歌人でもありました。藤原為時の娘として生まれ、一条天皇の中宮彰子に女房として仕えました。女房として使えることから、源氏物語の執筆を開始したとされます。随筆にとどまらず、中古三十六歌仙および女房三十六歌仙の一人として選ばれるなど、歌人としても優れた人物として知られます。
句の語句語法
めぐり逢ひて | 「めぐりあひ」の対象は、表向きは「月」だが、新古今集の詞書から、実際は幼馴染の友人(女性)であることがわかる。月に託して、幼馴染と巡り逢ったことを示す。「月」と「めぐる」は縁語(関係が深くよく一緒に使われる言)。字余り。 |
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見しやそれとも | 「し」は、過去の助動詞「き」の連体形。「や」は、疑問の係助詞で、結びは省略されている。「それ」は、表向きは「月」のことだが、幼馴染を重ねている。「と」は、引用の格助詞。「も」は、強意の係助詞。 |
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わかぬ間に | 「わか」は、カ行四段の動詞「わく(分く・別く)」の未然形。「ぬ」は、打消の助動詞「ず」の連体形。「に」は、時を表す格助詞。よって「見分けがつかないうちに」の意味。 |
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雲隠れにし | 月(幼馴染)が雲に隠れてしまった、つまり「幼馴染がいなくなる」ことを表す。「に」は、完了の助動詞「ぬ」の連用形。「し」は、過去の助動詞「き」の連体形。 |
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夜半の月かな | 「夜半(よは)」は夜中・夜更けの意味。最後の「かな」は、詠嘆の終助詞だが、「新古今集」や百人一首の古い写本では、「月影」とされている。「めぐる」と「月」は縁語。 |
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句の決まり字
決まり字「め」 |
めぐりあひて みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よはのつきかな |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | めぐりあひて みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よはのつきかな |
覚え方 | メグ、雲隠れ 雲の中に隠れる女性 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
Meeting in the way--,
While I can not clearly know
If 'tis friend or not;--
Lo! the midnight moon, ah me!
In a cloud has disappeared. |