百人一首58番 「ありま山 ゐなの笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする」(大弐三位)の意味と現代語訳
百人一首の58番、大弐三位の歌「ありま山 ゐなの笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 ありま山 ゐなの笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする |
日本語訳 有馬山のふもとにある猪名(いな)の笹原に風が吹くと、笹の葉がそよそよと音をたてる。そうですよ、(笹の葉の立てる音のように)どうしてわたしがあなたを忘れたりするものですか。
|
句の作者
大弐三位(999〜1082)
大弐三位(だいにのさんみ)は、平安時代中期の歌人で、女房三十六歌仙の一人でした。藤原宣孝と紫式部の娘として生まれ、後冷泉天皇の乳母を務めました。
句の語句語法
有馬山 | 兵庫県神戸市北区有馬町にある六甲山の一部。昔から猪名(いな)とは組でよく歌に詠まれる。 |
---|
猪名(いな)の笹原 | 兵庫県尼崎市・伊丹市・川西市周辺の平地。昔は、一面に笹が生えており、有馬山と猪名は、歌枕で揃って詠みこまれることが多い。 |
---|
風吹けば | 「吹けば」は、動詞の已然形+接続助詞「ば」で、順接の確定条件。風が吹けば笹原がそよぐことから、有馬山から風吹けば、までの上の句全体は、「そよ」を導き出す序詞となっている。よって「風が吹いたら」の意味。 |
---|
いでそよ | 「いで」は感動詞で、「さあ」の意味。「そよ」は指示代名詞+間投助詞で、笹がたてるさらさらという葉ずれの擬声語を示すとともに、「そうよ」だとか「そうなのよ!」などの意味で、二重の意味を持つ掛詞。掛詞は短歌では重要なテクニックのひとつ。後拾遺集の詞書に、「かれがれなる男の、おぼつかなくなど言ひたりけるによめる」とあることから、自分から心が離れかけている恋人(男性)が、「あなたが心変わりしたのではないかと気がかりだ」としらじらしく言ってきたことに対する返答。 |
---|
人を忘れやはする | 「人」はこの場合、相手の男を指し、「やは」は反語の助詞。「する」は、サ変動詞「す」の連体形で、「やは」の結び。よって「どうしてあなた(男性)を忘れることができるでしょう」を意味する。 |
---|
句の決まり字
決まり字「ありま」 |
ありまやま ゐなのささはら かぜふけば いでそよひとを わすれやはする |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | ありまやま ゐなのささはら かぜふけば いでそよひとを わすれやはする |
覚え方 | 有馬、いーで 有馬温泉で出会った人と話す男の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
If Mount Arima
Sends his rustling winds across
Ina's bamboo-plains;--
Well! in truth, tis as you say;
Yet how can I e'er forget? |