句の意味・現代語訳

原文
ありま山 ゐなの笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする
日本語訳
有馬山のふもとにある猪名(いな)の笹原に風が吹くと、笹の葉がそよそよと音をたてる。そうですよ、(笹の葉の立てる音のように)どうしてわたしがあなたを忘れたりするものですか。

句の作者

大弐三位(999〜1082)

大弐三位(だいにのさんみ)は、平安時代中期の歌人で、女房三十六歌仙の一人でした。藤原宣孝と紫式部の娘として生まれ、後冷泉天皇の乳母を務めました。

句の語句語法

有馬山兵庫県神戸市北区有馬町にある六甲山の一部。昔から猪名(いな)とは組でよく歌に詠まれる。
猪名(いな)の笹原兵庫県尼崎市・伊丹市・川西市周辺の平地。昔は、一面に笹が生えており、有馬山と猪名は、歌枕で揃って詠みこまれることが多い。
風吹けば「吹けば」は、動詞の已然形+接続助詞「ば」で、順接の確定条件。風が吹けば笹原がそよぐことから、有馬山から風吹けば、までの上の句全体は、「そよ」を導き出す序詞となっている。よって「風が吹いたら」の意味。
いでそよ「いで」は感動詞で、「さあ」の意味。「そよ」は指示代名詞+間投助詞で、笹がたてるさらさらという葉ずれの擬声語を示すとともに、「そうよ」だとか「そうなのよ!」などの意味で、二重の意味を持つ掛詞。掛詞は短歌では重要なテクニックのひとつ。後拾遺集の詞書に、「かれがれなる男の、おぼつかなくなど言ひたりけるによめる」とあることから、自分から心が離れかけている恋人(男性)が、「あなたが心変わりしたのではないかと気がかりだ」としらじらしく言ってきたことに対する返答。
人を忘れやはする「人」はこの場合、相手の男を指し、「やは」は反語の助詞。「する」は、サ変動詞「す」の連体形で、「やは」の結び。よって「どうしてあなた(男性)を忘れることができるでしょう」を意味する。

句の季節・部立

季節・部立

句の決まり字

決まり字「ありま」
ありまやま ゐなのささはら かぜふけば いでそよひとを わすれやはする

句の語呂合わせ(覚え方)

語呂合わせ
ありまやま ゐなのささはら かぜふけば
いでそよひとを わすれやはする
覚え方有馬、いーで
有馬温泉で出会った人と話す男の子

句の出典

出典
後拾遺集

句の詠み上げ

句の英訳

百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。

英訳
If Mount Arima Sends his rustling winds across Ina's bamboo-plains;-- Well! in truth, tis as you say; Yet how can I e'er forget?