百人一首81番 「ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただありあけの 月ぞ残れる」(藤原実方)の意味と現代語訳
百人一首の81番、後徳大寺左大臣の歌「ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただありあけの 月ぞ残れる」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただありあけの 月ぞ残れる |
日本語訳 ほととぎすが鳴いている方を眺めると、そこにホトトギスの姿はもうなく、ただ空に有明の月が残っているだけであった。
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句の作者
後徳大寺左大臣(1139〜1192)
後徳大寺左大臣(ごとくだいじのさだいじん)は、藤原実方(ふじわらのさねさだ)のこと。平安時代中期から後期にかけて活躍した公卿であり、歌人です。左大臣であった藤原師尹の孫として生まれました。中古三十六歌仙の一人に数えられる人物で、管弦と漢詩、また今様に長けた人物として知られました。
句の語句語法
ほととぎす | カッコウ科の鳥で、冬は東南アジアに渡る。托卵の習性があり、ウグイスなどの巣に卵を産む。日本には夏に飛来するため、初夏を代表する事物としてよく歌に採り上げられる。夏の訪れを知らせる鳥として平安時代には愛され、初音(季節に初めて鳴く声)を聴くことがブームだった。 |
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鳴きつる方 | 「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形で、「鳴いた方角」の意味。「つ」は、意思的・作為的な動作の完了に用いられる助動詞であり、ほととぎすを擬人化している。「ぬ」は自然な無意識の動作を表す動詞に繋がる場合がほとんど。 |
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眺むれば | マ行下二段の動詞「ながむ」の已然形に接続助詞「ば」がつき、順接の確定条件となる。よって「見てみれば」の意味。 |
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ただ有明の月ぞ残れる | 「ただ」は残れるを修飾する副詞で、「有明けの月」は夜が明ける頃になっても空に残って輝いている月。「る」は存続の助動詞「り」の連体形で、強意の係助詞「ぞ」の結び。よって「その方向にはただ夜明け前の月がぽっかり浮かんでいるだけだった」を意味する。 |
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句の決まり字
決まり字「ほ」 |
ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただありあけの つきぞのこれる |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただありあけの つきぞのこれる |
覚え方 | ほととぎすはタダ ほととぎすの鳴き声を無料で聞く女の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
When I turned my look
Toward the place whence I had heard
Hototogisu,--
Lo! the only object there
Was the moon of early dawn. |