百人一首83番 「世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる」(藤原俊成)の意味と現代語訳
百人一首の83番、皇太后宮大夫俊成の歌「世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる |
日本語訳 世の中なんて、悲しみや辛さから逃れる道がないものだ。思いつめて(世俗から離れるべく)逃れてきた山の奥にも、鹿が悲しげに鳴く声が聞こえてくる。
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句の作者
皇太后宮大夫俊成(1114〜1204)
皇太后宮大夫俊成(こうたいごうぐうのだいぶとしなり)は、藤原俊成(ふじわらのとしなり)のこと。平安時代後期から、鎌倉時代初期にかけての公卿であり、歌人でもありました。権中納言・藤原俊忠の子として生まれました。千載和歌集の撰者としても知られる人物で、家集である「長秋詠藻(ちょうしゅうえいそう)」を記した人物としても知られます。
句の語句語法
世の中よ | 「よ」は詠嘆の間投助詞。「というものは、ああ~」というイメージ。 |
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道こそなけれ | 「道」は、方法・手段の意味。「こそ」は強意の係助詞で「なけれ」はク活用の形容詞「なし」の已然形でこその結び。よって「(悲しみを逃れる)方法などないものだ」の意味。二句切れ。 |
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思ひ入(い)る | 本来「深く考えこむこと」を意味するが、「入る」は「入山する・隠遁する」と重ね合わされ、「隠棲しようと思い詰め、山に入る」の意味を示す。 |
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山の奥にも | 俗世間から離れた場所。「に」は、場所を表す格助詞。「も」は、並列を表す係助詞。 |
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鹿ぞ鳴くなる | 「ぞ」は強意の係助詞。「なる」は推定の助動詞「なる」の連体形で、「ぞ」の結び。よって「鹿が鳴いている」を意味する。牝鹿を慕う牡鹿が山の中で鳴いている風情は、哀れを誘い和歌では人気がある。 |
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句の決まり字
決まり字「よのなかよ」 |
よのなかよ みちこそなけれ おもひいる やまのおくにも しかぞなくなる |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | よのなかよ みちこそなけれ おもひいる やまのおくにも しかぞなくなる |
覚え方 | 世の中よ、山の奥 世間を離れて山奥で過ごす女の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
Ah! within the world,
Way of flight I find nowhere.
I had thought to hide
In the mountains' farthest depths;
Yet e'en there the stag's cry sounds. |