百人一首59番 「やすらはで 寝なましものを さ夜ふけて かたぶくまでの 月を見しかな」(赤染衛門)の意味と現代語訳
百人一首の59番、赤染衛門の歌「やすらはで 寝なましものを さ夜ふけて かたぶくまでの 月を見しかな」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 やすらはで 寝なましものを さ夜ふけて かたぶくまでの 月を見しかな |
日本語訳 あなたが来ないと知っていたなら、ためらわずにさっさと寝ていただろうに。あなたをお待ちするうちに夜が更けてしまい、とうとう明け方に西に傾こうとする月を眺めてしまいました。
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句の作者
赤染衛門(956〜1041)
赤染衛門(あかぞめえもん)は、平安時代中期の歌人で、中古三十六歌仙・女房三十六歌仙の一人でもありました。中宮彰子に仕えました。「栄花物語」の作者という説もある人物ですが、定かではありません。
句の語句語法
やすらはで | ハ行四段の動詞「やすらふ」の未然形で、「ためらう・ぐずぐずする」の意味。「で」は、打消の接続助詞で、「~ないで」の意味。 |
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寝なましものを | 「な」は、完了の助動詞「ぬ」の未然形。「まし」は反実仮想(現実には起こらなかったことを、もし起こればと想像すること)の助動詞で、「ものを」は逆接の接続助詞。ここでは「もし~であれば、寝てしまったであろうに」の意味。 |
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さ夜ふけて | 「さ」は言葉の調子を整えるための接頭語。よって「夜は更けて」の意味。 |
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傾(かたぶ)くまでの | 「傾(かたぶ)く」は、月が西の山に傾くこと。月は夜の早いうちに東から昇って夜明け前に西に沈んで行くので、「夜明けが近づいた」の意味。「まで」は事柄が至り及ぶ限界を表す副助詞。よって「月が西に沈むまでの」を意味する。 |
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月を見しかな | 「かな」は詠嘆の終助詞。よって「月を見たことですよ」を意味する。 |
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句の決まり字
決まり字「やす」 |
やすらはで ねなましものを さよふけて かたぶくまでの つきをみしかな |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | やすらはで ねなましものを さよふけて かたぶくまでの つきをみしかな |
覚え方 | 安かった 安いおもちゃを買った女の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
Better to have slept
Care-free, than to keep vain watch
Through the passing night,
Till I saw the lonely moon.
Traverse her descending path. |