百人一首65番 「うらみわび ほさぬ袖だに あるものを 恋にくちなむ 名こそをしけれ」(相模)の意味と現代語訳
百人一首の65番、相模の歌「うらみわび ほさぬ袖だに あるものを 恋にくちなむ 名こそをしけれ」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 うらみわび ほさぬ袖だに あるものを 恋にくちなむ 名こそをしけれ |
日本語訳 恨みに恨み過ぎて、ついに恨む気力すらも失って、私が流す涙に濡れた袖が乾く暇もありません。そんな袖さえ惜しいのに、この恋のおかげでつまらない噂で朽ちてしまうであろう私の評判がなんとも惜しいことです。
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句の作者
相模(998〜1061)
相模(さがみ)は、平安時代中期の歌人で、女流歌人として知られる人物です。数多くの男性と関係を持ったことで知られます。
句の語句語法
恨みわび | 「わび」は、バ行上二段活用の動詞「わぶ」の連用形で、「~わぶ」は「~する気がなくなる」の意味。よって「恨む気力も失って」を意味する。 |
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ほさぬ袖(そで)だに | 「ほさ+ぬ」で「干さない」、つまり(涙で)濡れたままにしているの意味。「ほさぬ袖」は、いつも泣いて涙を拭いているので「乾くひまもない袖」の意味。程度の軽いものを示して、重いものを類推させる副助詞「だに」は「~でさえ」の意味。 |
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あるものを | この場合、「ある」の前に「口惜し」を補って考える。「ものを」は詠嘆をこめた逆接の接続助詞で「~のに」の意味。よって「袖が朽ちるのさえ悔しいのだから」と、後で恋愛に関する悪い噂が立つことと比較している。 |
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恋(こひ)に朽ちなむ 名こそ惜しけれ | 「に」は、原因・理由を表す格助詞。「な」は、完了の助動詞「ぬ」の未然形で、強意を表す。「む」は、推量の助動詞の連体形。よって「恋のせいで朽ちてしまうであろう」の意味。「こそ」と「惜しけれ」は、係り結び。「名」は、評判。「こそ」は、強意の係助詞。「惜しけれ」は、形容詞「惜しき」の已然形。よって「失恋の噂で汚れてしまいそうな私の評判がとても残念だ」を意味する。 |
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句の決まり字
決まり字「うら」 |
うらみわび ほさぬそでだに あるものを こひにくちなむ なこそをしけれ |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | うらみわび ほさぬそでだに あるものを こひにくちなむ なこそをしけれ |
覚え方 | 裏の鯉に 裏庭の池で鯉を見つける男の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
Even when my sleeves,
Through my hate and misery,
Never once are dry,--
For such love my name decays:--
How deplorable my lot! |