百人一首66番 「もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし」(前大僧正行尊)の意味と現代語訳
百人一首の66番、前大僧正行尊の歌「もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし」の意味・現代語訳と解説です。
句の意味・現代語訳
原文 もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし |
日本語訳 私がお前を見て愛しく思うように、お前も私のことを愛しいと思ってくれ、山桜よ。お前以外に私を知る人は(こんな山奥には)いないのだから。
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句の作者
前大僧正行尊(1055〜1135)
前大僧正行尊(さきのだいそうじょうぎょうそん)は、平安時代後期の天台宗僧侶であり、歌人でした。源基平の子として生まれました。大僧正を務め、平等院大僧正とも呼ばれました。
句の語句語法
もろともに | 「一緒に」を意味する副詞。 |
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あはれと思へ 山桜 | 「あはれ」は感動詞「あ」と「はれ」が組み合わさって生まれた形容動詞の語幹。「愛しい・いつくしい」という感動を表す。「思へ」は、ハ行四段の動詞、「思ふ」の命令形で、ここでは「思ってくれ」という依頼を表す。山桜を疑人化し、「山桜よ」、「一緒に愛しいと思っておくれ」と呼びかけている。金葉集の詞書によると、行尊が大峰山(現在の奈良県吉野郡)において、思いがけず山桜を見て詠んだ歌とある。 |
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花より外(ほか)に | 「花」は「山桜」。「より」は限定を表す格助詞。 |
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知る人もなし | 「知る人」とは知人ではなく、「自分の理解者」を指す。「知る人もなし」は、大峰山で修行中の孤独な自分にとって、理解者が誰もいないということを表す。 |
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句の決まり字
決まり字「もろ」 |
もろともに あはれとおもへ やまざくら はなよりほかに しるひともなし |
句の語呂合わせ(覚え方)
語呂合わせ |
句 | もろともに あはれとおもへ やまざくら はなよりほかに しるひともなし |
覚え方 | もろともに花よ 友人と一緒に花を摘む女の子 |
句の英訳
百人一首の句の英訳です。英訳はClay MacCauley 版を使用しています。
英訳 |
Let us, each for each
Pitying, hold tender thought,
Mountain-cherry flower!
Other than thee, lonely flower,
There is none I know as friend. |